フリーランスになれば、会社に縛られず自由に働ける
そんな働き方に憧れて、独立を考える人もいるでしょう。
もちろん、独立したからこそ得られる自由はあります。しかし、会社を辞めれば、仕事の技術だけで生きていけるわけではありません。
私はこれまで、
日雇い、会社員、役員、個人事業主、法人代表と、さまざまな立場で働いてきました。現在は、自分の会社を経営しながら、ほかの2社でも役員を務めています。
その経験から思うのは、フリーランスに必要なのは一つの専門スキルではなく、自分の仕事と生活を経営する力だということです。
この記事では、独立する前に知っておきたい、仕事とお金の現実についてお伝えします。
フリーランスに必要なのは専門技術だけではない
フリーランスになるには、お金をもらえる専門スキルが必要です。
ライティング、デザイン、プログラミング、動画編集、コンサルティング。私のような建設業であれば、施工に関する技術や知識が商品になります。
しかし、専門技術があるだけでは事業は続きません。
自分で仕事を取り、見積もりを出し、期限までに仕事を終わらせる。
請求書を発行し、入金を確認して、税金や社会保険料を支払う。
問題が起きたときには、自分で対応しなければなりません。
会社員であれば、会社の誰かが担ってくれていた仕事も、独立後はすべて自分の仕事になります。
技術を身につけることは、独立するための入口です。
その技術を仕事として成立させ、継続させる力まで含めて、フリーランスに必要なスキルだと私は思います。
会社員は思っている以上に守られている
若い頃の私は、給与明細を見て、
「なんか、めちゃくちゃ会社に取られている」と思っていました。
給与から税金や社会保険料が引かれ、手取りが思っていたより少なくなる。当時は、ただお金を取られているように感じていたのです。
しかし、個人事業主や会社の経営側を経験した今は、考え方が変わりました。
会社は、従業員に代わって税金や社会保険に関する手続きを行っています。年末調整もその一つです。
さらに、健康保険料や厚生年金保険料は、原則として会社と従業員で負担を分けています。
若い頃の私は、そんなことすら知りませんでした。
給与から引かれる金額だけを見て、「会社に取られている」と思っていたのです。
もちろん、会社員にも会社員の苦労があります。
それでも、会社が行ってくれている手続きや負担は、独立して初めてそのありがたさに気づくものです。
独立して自由になるということは、会社に守られる立場から、自分で自分を守る立場へ移ることでもあります。
税金と社会保険について勉強しておく
フリーランスを目指すなら、税金と社会保険については勉強しておくべきです。
難しい税法を、すべて暗記する必要はありません。
専門的な手続きは、税理士や社会保険労務士などに相談できます。
しかし、自分が何を支払い、なぜその支払いが必要なのか、まったく分からないまま丸投げするのは危険です。
売上と利益は違います。
口座に入金された金額を、すべて自由に使えるわけでもありません。そこから経費を払い、税金や社会保険料も納めます。
独立を考えているなら、まずは確定申告について調べてみてください。副業などで申告が必要な状況にある人は、自分で経験してみるのも勉強になります。
会社員の頃には見えにくかった、お金の流れが分かるようになるはずです。
なお、税金や社会保険の制度は、立場や所得、家族構成などによって異なります。具体的な判断が必要な場合は、税務署や年金事務所、専門家などへ確認してください。
個人事業主か法人かは条件を見て決める
独立するときに迷うのが、個人事業主として始めるか、法人を設立するかという問題です。
「法人のほうが信用されそう」
「売上が増えたら法人にしたほうが得らしい」
そのような理由だけで、法人化を決めるのはおすすめしません。
私の場合は建設業だったため、個人事業主よりも法人のほうが、現場へ入る際の書類や取引上の手続きを進めやすい事情がありました。
つまり、単純に法人のほうが得だったからではなく、
仕事をするうえで法人のほうが都合がよかったのです。
一方、そのような制約がない業界なら、個人事業主のままで問題なく働ける人もいるでしょう。
法人を設立すれば、社会保険への加入や法人にかかる税金、会計や事務の負担も関係してきます。法人は、肩書きが立派になるだけの制度ではありません。
個人事業主と法人のどちらが合っているかは、
- 自分が働く業界
- 取引先から求められる条件
- 売上と利益
- 社会保険の負担
- 今後の事業規模
などを踏まえて判断する必要があります。
「フリーランスになるなら、いずれ法人化するもの」と決めつけず、まずは両者の違いをきちんと勉強しましょう。
そのうえで、必要に応じて税理士や社会保険労務士などの専門家にも相談し、自分の仕事と将来の計画に合うほうを選ぶことが大切です。
フリーランスの仕事は勝手に降ってこない
専門技術を身につけて独立すれば、自然と仕事が来る。
残念ながら、現実はそれほど簡単ではありません。
会社員は、会社が受注した仕事を担当できます。
しかし、フリーランスは、その仕事自体を自分で取らなければなりません。
私が個人事業主として仕事を始められたのも、それまでに築いてきた人脈があったからです。
正直に言えば、まったく新しい相手から、自力で仕事を取るのは難しかったと思います。
技術があったとしても、初めて会った相手には、その技術が本物か分かりません。
納期を守るのか。途中で仕事を投げ出さないのか。問題が起きたときに、きちんと対応してくれるのか。
実績も信用もない状態では、仕事を任せる側も不安になります。
特に日本では、実績だけでなく「この人なら任せても大丈夫」という信用が重視されます。何のつながりもない状態から、最初の仕事を獲得するのは簡単ではありません。
現在はSNSやブログ、ポートフォリオ、クラウドソーシングなど、自分の仕事を知ってもらう手段があります。AIを使えば、発信内容や営業資料を作るハードルも以前より下がりました。
昔より発信しやすい環境にはなっています。
ただし、発信手段があることと、信用があることは別です。SNSを始めただけで、仕事が次々に来るわけではありません。
小さな仕事でも実績を作る。約束を守る。相手の期待に応える。その信用が、次の依頼や紹介につながっていきます。
独立前に考えるべきなのは、「自分に何ができるか」だけではありません。
最初の仕事を誰から、どのように受けるのか。
ここまで考えておく必要があります。
私自身、独立後の仕事は、それまでに築いてきた人脈から始まりました。仕事につながる人脈の考え方については、こちらの記事でも詳しく書いています。
【保存版】人脈はどう作る?広げる?ゼロから始める人脈形成の考え方と実践法
売上があっても資金が足りないことがある
フリーランスや経営者にとって、売上と同じくらい重要なのが資金繰りです。
仕事を終えたからといって、すぐにお金が入るとは限りません。
私が関わってきた仕事では、締め日に請求書を出してから、実際に入金されるまで1か月ほどかかることが一般的でした。取引条件によっては、2か月先になることもあります。
しかし、その間にも支払いは発生します。
材料費や交通費などは、入金より先に必要になります。人を雇っていれば、給与も支払わなければなりません。
帳簿の上では売上が立っていても、手元に現金がなければ支払いはできません。
「今月100万円売れたから、100万円使える」という話ではないのです。
その売上は、まだ入金されないかもしれません。
入金後も、材料費や外注費、税金、社会保険料などの支払いがあります。
売上、利益、手元の現金は、それぞれ別のものです。
独立するなら、少なくとも次の点は確認しておきましょう。
- 仕事をしてから入金されるまでの期間
- 材料費や外注費などを支払う時期
- 毎月必ず出ていく固定費
- 税金や社会保険料の支払時期
- 入金が遅れても耐えられる運転資金
仕事が多いのに資金が足りなくなることもあります。
売上の大きさだけを見るのではなく、いつお金が入り、いつ出ていくのかを把握する。
それが、事業を続けるために必要な資金管理です。
最後は自分で責任を引き受ける
フリーランスは、自分で働き方を決められます。
どの仕事を受けるか。誰と仕事をするか。
いつ、どこで働くか。会社員よりも、自分で選べる範囲は広がるでしょう。
しかし、自由に決められるということは、
その結果も自分で引き受けるということです。
仕事が取れない。入金が遅れる。見積もりを間違える。納期に間に合わない。取引先との間で問題が起きる。
そのようなときに、会社や上司が代わりに対応してくれるわけではありません。
失敗しないことが大切なのではありません。
失敗や問題が起きたときに、状況を確認し、相手へ説明し、最後まで仕事を収めることが大切です。
私は、『責任を取ること』と『責任を持って仕事をすること』は別だと考えています。その違いについては、こちらの記事で詳しく書いています。
独立に必要なのは、「全部一人で抱え込む強さ」ではありません。
必要に応じて専門家に相談し、外部へ仕事を頼み、自分に足りない知識を学ぶ。そのうえで、最終的な判断から逃げないことです。
自由とは、何でも好き勝手にできることではありません。
自分で選び、その結果に責任を持てること。
それが、独立して働くということだと思います。
まとめ|独立前に自分の仕事を経営する準備をしよう
フリーランスに必要なのは、専門技術だけではありません。
- 仕事を取る力
- 信用を積み上げる力
- お金を管理する力
- 税金や社会保険を理解する力
- 問題が起きたときに逃げずに対応する力
が必要です。
会社員は会社に縛られる働き方で、フリーランスは自由な働き方。そんな単純な優劣ではありません。
会社員には、会社員だから受けられる保障があります。フリーランスや会社代表には、自分で選び、動かせる範囲があります。
どちらが優れているかではなく、背負うものが違うのです。
私は、日雇い、会社員、役員、個人事業主、法人代表と、さまざまな立場で働いてきました。
その経験を通して感じるのは、独立とは、専門スキルだけを持って会社の外へ出ることではないということです。
仕事を取り、完了させ、お金を残し、自分の生活を守る。
フリーランスに本当に必要なのは、
自分自身を一つの事業として経営する力だと思います。

