「人間力が高い人」と聞くと、どんな人を思い浮かべますか。
優しい人。
話をよく聞いてくれる人。
いつも穏やかで、周囲への気配りができる人。
もちろん、それも人間力の一つでしょう。
でも私は、その人の人間力が最もよく表れるのは、うまくいっているときではないと思っています。
失敗したとき。
問題が起きたとき。
誰もやりたがらない仕事が残ったとき。
そんな場面で、
嘘や言い訳をせず、自分が担うべきことから逃げない。
それが、私の考える「人間力の高い人」です。
人間力とは自分が担うべきことから逃げない力
仕事をしていれば、やりたくないことにも必ず出会います。
- 取引先へ謝りに行く。
- 面倒な問題を整理する。
- 言いにくいことを誰かに伝える。
- 誰も手をつけたがらない仕事を片づける。
誰だって、できれば避けたいでしょう。
嫌なことを嫌だと思うのは、悪いことではありません。私だって嫌なものは嫌です。
それでも、「誰がやるべきか」と考えたとき、自分だと思ったなら逃げない。
嫌ではないからできるのではありません。
嫌でも、自分が担うべきだと思うからやるのです。
人間力とは、何でも喜んで引き受けることではありません。
自分がやるべきことを分かっていながら、誰かに押しつけて逃げない力です。
誰もやりたがらなかった展示会のプレゼン
以前、展示会で商品のプレゼンをすることになりました。
ところが、誰が登壇するかという話になると、誰も「やりたい」とは言いません。
人前で話せば緊張します。準備にも時間がかかります。
失敗すれば、多くの人の前で目立ちます。
できればやりたくないと思うのは、当然です。
私は商品について理解していましたが、すべての面で一番の適任者だったわけではありません。
正直に言えば、顔立ちや声の通りまで考えると、私よりプレゼンに向いている人はいました。
私は立場が上でした。
「あなたのほうが向いているから、あなたがやって」と命じることもできました。
でも、誰もやりたがらない仕事だけを、立場を使って下の人へ押しつけるのは違うと思いました。
展示会に出ると決めた以上、誰かがプレゼンをしなければなりません。自分にできない仕事でもありません。
だから、初回の展示会では私が一人でプレゼンをしました。
一番やりたかったからではありません。
一番向いていたからでもありません。
自分が引き受けるべきだと思ったからです。
人間力は失敗したときの態度にも表れる
人間力は、誰もやりたがらない仕事を前にしたときだけでなく、失敗したときにも表れます。
仕事でミスをしたとき、
「○○さんが、そう言ったので」
「私は○○だと思っていました」
「そんな話は聞いていませんでした」
と、自分以外の原因から話し始める人がいます。
もちろん、原因を明らかにするための事実確認は必要です。何でも自分一人の責任にする必要もありません。
何でも背負うことと、自分の判断や行動を引き受けることは違います。その違いは、【責任を持つ・責任を取るの違い】仕事で本当に必要なのは?で詳しく書いています。
ただ、事実の説明と、自分を守るための言い訳は違います。
「○○だと思っていました」で終わるのではなく、
「私は○○だと思い、確認せずに進めました」
と言えるかどうか。
同じ出来事を話していても、後者は自分の判断と行動を引き受けています。
自分の失敗を認めるのは、怖いものです。
怒られるかもしれない。
評価が下がるかもしれない。
恥ずかしい思いをするかもしれない。
だからこそ、そこで嘘をつかず、言い訳に逃げない人は信用できます。
嘘や言い訳で自分を守るほど、自分自身の成長も止まります。詳しくは、【成長】一番怖い嘘は、自分につく嘘で書いています。
人間力とは、失敗しない能力ではありません。
失敗したときに自分を守ることばかり考えず、事実と向き合える力です。
引き受けたなら文句を言わずにやり切る
嫌な役割を引き受けたあと、
「誰もやらないから、仕方なく私がやっています」
「本当は○○さんがやるべきなんですけどね」
と周囲に言い続ける人もいます。
私は、やると決めたなら文句を言わずにやるべきだと思っています。
嫌だと思うこと自体は構いません。引き受けるかどうかを決める前なら、意見を伝えてもいいでしょう。
しかし、自分でやると決めたあとまで不満を言い続ければ、一緒に働く人も嫌な気持ちになります。
せっかく引き受けた行動まで、「自分ばかり損をしている」と周囲へ訴えるための材料になってしまいます。
引き受けたなら、まずはやり切る。
それも人間力の一つです。
人間力を磨くなら次に任せる準備もする
ただし、人間力が高い人とは、何でも一人で背負い続ける人ではありません。
誰もやりたがらないからといって、毎回同じ人が引き受けていたら、周囲はいつまでもできるようになりません。
そのうち、「あの人がやってくれる」「あの人の仕事だから」と、頼ることが当たり前になってしまいます。
私も、展示会のプレゼンをずっと一人で続けたわけではありません。
初回は、私一人で担当しました。
二回目は、後輩と二人で担当しました。
そして三回目以降は、後輩に任せました。
最初から、経験のない後輩へ押しつけることはしない。
まず自分がやってみせる。次は一緒に経験する。
できるようになったら任せる。
この順番なら、自分だけが背負い続けることもなく、後輩も新しい仕事ができるようになります。
最初に引き受ける強さと、次の人を育てて手放す力。
その両方が必要です。
仕事を次の人へ渡せる状態をつくるには、育てる側の姿勢も欠かせません。【決定的な違い】人を育てられる人・育てられない人で、さらに詳しく書いています。
自己犠牲と人間力は同じではない
ここまで読むと、
「嫌なことでも我慢して、全部自分でやれということ?」と思う人もいるかもしれません。
そうではありません。
自分より明らかに適任の人がいて、本人も引き受ける意思があるなら、任せればいいのです。
仕事を分担することも、人を頼ることも必要です。
無理をして体や心を壊すまで耐えることが、人間力ではありません。勝ち目のない方法を捨てることや、壊れる前に仕事を降りることも、単なる逃げとは違います。
大切なのは、
・自分が嫌だから、立場の弱い人に押しつけていないか。
・自分が担うべきだと分かっているのに、知らないふりをしていないか。
と考えることです。
何でも背負う必要はありません。
でも、自分が担うべき責任や負担からは逃げない。
この線引きが大切なのだと思います。
人間力は日々の選択によって磨かれる
人間力を磨くために、特別な勉強は必要ありません。
必要なのは、仕事の中で選択を迫られたとき、自分を守ることだけを優先しないことです。
- 失敗したら、嘘や言い訳をする前に、自分の判断を振り返る。
- 誰もやりたがらない仕事が残ったら、誰が担うべきかを考える。
- 自分が引き受けると決めたら、文句を言わずにやり切る。
- そして、同じ人が背負い続けなくてもいいように、次の人を育てる。
一つひとつは、目立つ行動ではありません。
それでも、こうした場面で逃げない人は、少しずつ周囲から信頼されていきます。
反対に、普段どれだけ立派なことを言っていても、都合が悪くなった途端に嘘をつき、人へ責任を押しつける人は信用されません。
人間力は、言葉で示すものではありません。
嫌なこと、苦しいこと、都合の悪いことに直面したとき、その人が何を選ぶかに表れます。
まとめ|人間力は逃げたくなる場面に表れる
人間力の高い人とは、何でもできる人でも、いつも優しい人でもありません。
自分が担うべきだと思ったことから、逃げない人です。
失敗したときに、嘘や言い訳で自分を守らない。
誰かがやらなければならない仕事を、自分が担うべきなら引き受ける。
一度引き受けたなら、文句を言わずにやり切る。
そして、自分だけが背負い続けないように、次の人を育てる。
人間力とは、嫌なことを嫌だと思わない力ではありません。
嫌だと思っても、自分がやるべきことから逃げない力です。
人間力を磨きたいなら、まずは次に誰もやりたがらない仕事が出てきたとき、考えてみてください。
「誰かがやればいい」ではなく、
「これは、本当は誰がやるべきだろう」
その答えが自分なら、逃げずに一度やってみる。
その選択の積み重ねが、周囲からの信頼と、自分自身の強さをつくっていきます。

