【WBSの作り方】仕事を分解して抜け漏れを防ぐ実務手順

【WBSの作り方】仕事を分解して抜け漏れを防ぐ実務手順 実務スキル

「準備は進んでいると思っていたのに、本番直前になって仕事が次々出てきた。」

複数人で仕事をしていると、こんなことがあります。

誰かがやっていると思っていた。そもそも必要な作業として認識されていなかった。確認や申請が抜けていた。

こうした「あとから出てくる仕事」を減らすために使えるのがWBSです。

WBSは Work Breakdown Structure の略で、日本語では「作業分解構成図」などと呼ばれます。単なるToDoリストやスケジュール表ではありません。

プロジェクト全体で何を完成させる必要があるのかを整理し、管理できる単位まで仕事を階層的に分解する方法です。

この記事で分かること

  • WBSとToDo・スケジュール表の違い
  • WBSを作る基本手順
  • 仕事をどこまで細かく分けるか
  • 抜け漏れ・重複を減らす考え方
  • 担当・期限・前後関係を決める順番
  • AIを使ってWBSを作るときの注意点

WBSとToDo・スケジュールは違う

WBSは「やることを並べた表」ではありません。

役割を分けると、違いが分かりやすくなります。

管理方法主に見るもの
ToDoリスト何をやるか
WBSプロジェクト全体にどんな仕事があるか
スケジュール表いつやるか
進捗管理表どこまで終わったか

たとえば展示会へ出展するとします。

ToDoなら「チラシを作る」「ホテルを予約する」「展示物を送る」と並べられます。

スケジュールなら「11月1日チラシ完成」「11月5日印刷発注」のように日付を付けます。

WBSでは、その前に仕事全体を分けます。

  • 出展手続き
  • 展示内容
  • 販促物
  • 搬入・搬出
  • 人員・移動
  • 当日運営
  • 展示会後の営業フォロー

さらに「販促物」を、チラシ・カタログ・名刺・掲示物などへ分けていきます。

WBSで仕事を見つけ、そのあとで担当・期限・順番を決める。

ここを逆にしない方が、抜けを見つけやすくなります。

WBS・ToDo・スケジュールの違い

WBSは「あとから仕事が出る」を減らす

私は昨年、展示会の準備でこれを経験しました。
準備は進んでいるつもりでした。

ところが本番直前になって、「え?これまだ終わってないの?」「これは誰がやるの?」という作業が次々出てきました。結果、最後の3日間は残業続き。

本番直前に仕事が増えたのではなく、前から存在していた仕事に、直前まで気付いていなかった。

WBSの価値は、進捗を管理できることだけではありません。

仕事の存在そのものを早めに見つけること。

これがかなり大きいです。

WBSは「成果物」から考える

いきなり「何をやる?」と細かい作業を書き始めるより、まず「最後に何が完成していれば、この仕事は終わりなのか」から考えます。

たとえば新商品発売なら、最初に考えるのはこんな大きな成果です。

  • 商品仕様が確定している
  • 価格が決まっている
  • 販売資料が完成している
  • 生産準備ができている
  • 初回在庫が準備できている
  • 販売チャネルが使える状態になっている

そこから「販売資料完成」を、構成決定・原稿作成・デザイン・校正・印刷のように分けます。

「営業する」「会議する」と行動だけを並べるより、何が完成すれば終わりかが分かりやすくなります。

WBSの作り方① ゴールと範囲を決める

最初に、何をもってプロジェクト完了とするのかを決めます。

展示会なら「出展する」だけでは曖昧です。

  • 展示物が準備されている
  • ブースを設営できる
  • 当日の人員が決まっている
  • 来場者へ説明できる
  • 展示会後に見込み客へフォローできる

どこまでを今回の仕事に含めるのか。

ここが曖昧だと、あとから「それも今回やるの?」が発生します。

WBSの作り方② 大きな仕事へ分ける

次に、プロジェクトを大分類へ分けます。

展示会なら、たとえば次のようになります。

  1. 出展手続き
  2. 展示内容
  3. 販促物
  4. 搬入・搬出
  5. 人員・移動
  6. 当日運営
  7. 展示会後フォロー

この段階では、まだ細かくしすぎません。

この大分類で、必要な仕事全体をカバーできているか。
まずそこを見ます。

WBSの作り方③ 管理できる単位まで分ける

大分類を、担当や進捗を管理できるところまで分解します。

販促物 → チラシ → 掲載内容決定 → 原稿作成 → デザイン → 校正 → 印刷発注 → 納品確認

WBSでは、最下層の管理単位を「ワークパッケージ」と呼びます。

名前を覚えるより、実務では次の3つで判断すれば十分です。

  • 誰がやるか決められる
  • どれくらいかかるか見積もれる
  • 終わったか判断できる

ここまで落とせれば、管理しやすくなります。

どこまで細かく分ければいい?

分解の細かさに、すべての仕事で使える絶対的な正解はありません。

次に何をすればいいか分からないなら粗すぎる。
管理する意味がないほど細かければ分けすぎ。

「チラシ制作」だけでは、担当者によってはまだ粗い。でも「Wordを開く」「ファイル名を付ける」まで分ける必要は普通ありません。

WBSを作ること自体が仕事にならない程度にします。

WBSの作り方④ 100%入っているか見る

WBSには「100%ルール」という考え方があります。

今回のプロジェクトに必要な仕事を全部含め、範囲外の仕事は入れない。

シンプルですが、ここがWBSの肝です。

展示会で、チラシ・展示物・搬入だけを考えても足りません。

  • 出展申請
  • 電源や備品の申請
  • 宿泊・移動
  • 人員配置
  • 名刺・配布物
  • 梱包
  • 搬出
  • 来場者情報の整理
  • 展示会後のフォロー

本番の作業だけでなく、申請・確認・承認・検査・後処理・報告は抜けやすいところです。

一度「ほかに必要なものはないか」を見直します。

展示会準備をWBSで分解する

WBSの作り方⑤ 重複をなくす

仕事を分解していくと、同じ作業が別の場所へ入ることがあります。

たとえば「展示会後フォロー」と「営業活動」の両方に、同じ見込み客への連絡を入れる。これでは担当や完了判断が曖昧になります。

一つの仕事には、基本的に一つの居場所を作る。

重複を減らすだけでも、誰が何をやるのか見えやすくなります。

WBSの作り方⑥ 実際にやる人へ見せる

自分一人で完成させない方がいい仕事もあります。

自分には全部見えているつもりでも、担当者に見せると「その前にこれが必要です」とすぐ出てくることがあります。

  • 営業だけで作ると、製造工程が抜ける
  • 現場だけで作ると、契約・請求が抜ける
  • 経営側だけで作ると、細かな準備作業が抜ける

関係者に見せるのは、単なる確認ではありません。

自分からは見えていない仕事を見つける工程です。

WBSの作り方⑦ 担当・期限・前後関係を付ける

仕事を洗い出したら、実行計画へ進みます。

  • 担当者
  • 期限
  • 所要時間
  • 前後関係
  • 進捗
  • 優先度

たとえば「チラシ印刷発注」は、原稿と校正が終わっていないと始められません。

こうした前後関係を見ないと、「期限はまだ先だから」と後回しにした作業が、後工程を全部止めることがあります。

WBS → 担当 → 工数 → 前後関係 → スケジュール

この順番で考えると整理しやすいです。

仕事の優先順位そのものに迷う場合は、こちらも参考にしてください。

よくある失敗① 最初から日程を書く

いきなりExcelを開いて「作業・担当・期限」を書き始めても、管理表は作れます。

ただし、表に入っていない仕事は管理できません。

まず仕事全体を洗い出し、その後で日程を付けます。

よくある失敗② 粒度がバラバラ

同じ階層に「展示会営業」「チラシ制作」「チラシの誤字確認」が並んでいたら、大きさが違いすぎます。

同じ階層には、できるだけ同程度の大きさの仕事を並べます。

よくある失敗③ 「みんなでやる」

担当を「営業部」「全員」にすると、最後に誰が確認するのか分からなくなります。

複数人で作業しても、最終的に誰が責任を持って完了確認するかは決めておいた方がいいです。

よくある失敗④ 細かくしすぎる

何百個もの作業へ分け、WBSの更新だけで時間がかかる。これでは本末転倒です。

管理するための仕事が、実際の仕事より重くならない。

WBSはExcelやスプレッドシートで十分

専用ツールがなくても、小規模なプロジェクトならExcelやGoogleスプレッドシートで十分作れます。

WBS作業担当期限状態
1展示会準備---
1.1販促物---
1.1.1チラシ原稿A10/1完了
1.1.2デザインB10/5作業中
1.1.3校正A10/7未着手

重要なのはツールではありません。

必要な仕事が見えているか。

まずそこです。

業務フローとは役割が違う

WBSと業務フローも似て見えますが、目的が違います。

WBSは、プロジェクトを構成する仕事を分解して「何が必要か」を明確にするもの。

業務フローは、仕事が「どの順番で、誰から誰へ流れるか」を見える化するものです。

定型業務の流れやボトルネックを整理したい場合は、こちらで詳しく解説しています。

AIにWBSの叩き台を作らせてもいい

生成AIに「展示会出展のWBSを作って」と頼めば、かなりの候補を短時間で出せます。ゼロから考えるより楽です。

ただし、AIには会社固有の申請、現場独自の準備、取引先との決まりまでは見えていません。

だから、

  1. AIに叩き台を作らせる
  2. 実務担当者が抜けを見る
  3. 会社固有の作業を追加する
  4. 担当・期限・前後関係を決める

くらいが使いやすいです。

AIにWBSを作らせることと、WBSが完成したことは同じではありません。

AIを使ったWBS作成の流れ

WBSを作るときのチェックリスト

  • プロジェクトのゴールと範囲は明確か
  • 必要な成果物を大きく分けたか
  • 管理できる単位まで分解したか
  • 必要な仕事がすべて入っているか
  • 同じ仕事が重複していないか
  • 申請・確認・承認・後処理が抜けていないか
  • 担当を決められる粒度か
  • 何をもって完了か分かるか
  • 実際に作業する人へ確認したか
  • 細かくしすぎていないか
  • 担当・期限・前後関係まで決めたか

まとめ|WBSは仕事を早めに見つけるために使う

WBSは、大きな仕事を細かく分けるためのものです。でも、目的は細かくすることではありません。

プロジェクト全体を見えるようにして、必要な仕事を早い段階で見つけること。

本番直前になって「これ誰がやるの?」「これまだ終わってないの?」となれば、残された時間で対応するしかありません。

仕事が直前に増えたのではなく、前から存在していた仕事に気付いていなかっただけかもしれません。WBSを作っても、すべての抜けをゼロにはできません。

それでも、後から仕事が湧いてくる状態を、早い段階で減らすことはできます。

大きな仕事ほど、いきなり日程を埋める前に「何を完成させる必要があるか」を分解する。

そこから担当と期限を決める。
これがWBSの基本です。

参考資料