【電子帳簿保存法】小規模事業者はどう保存する?経理1人・システムなしの実務対応

【電子帳簿保存法】小規模事業者はどう保存する?経理1人・システムなしの実務対応 実務スキル

「電子帳簿保存法って、全部電子保存しないといけないの?」

そんなことはありません。
電子でもらった・送ったものは、電子データで残す。紙でもらったものは、紙のまま残してOKです。

小さな会社の経理で特に気をつけたいのは、ネット通販やホテル予約など、自分で取りに行かないと手に入らない領収書を取り漏らさないことです。

この記事では、経理1人・専用システムなしの小規模事業者向けに、何を電子保存すればいいのか、PDFを印刷してよいのか、ECサイトやホテル予約の領収書をどう管理するのか、システムなしでどう運用するのかまで、実務に落として解説します。

※この記事は2026年10月31日時点の国税庁情報を基準にしています。

最初にこれだけ|データはデータ、紙は紙

電子帳簿保存法は難しそうに見えますが、小規模事業者なら、まず次の3つに分けると分かりやすいです。

受け取り方基本的な扱い
PDF・メール・Webなど電子データ電子データで保存
紙の請求書・領収書紙のまま保存してOK
紙を捨ててデータだけ残したいスキャナ保存の要件を確認

国税庁も、電子取引でやり取りした注文書・契約書・領収書・見積書・請求書などに相当するデータは、電子データで保存する必要があるとしています。

一方で、紙でやり取りしたものまで電子化する義務はありません。

つまり、「電子帳簿保存法だから全部スキャンしなきゃ」ではありません。

電子帳簿保存法はまずこれだけ

PDFで来た請求書は、PDFを残す

取引先から請求書PDFがメールで届いた。これは電子取引です。そのPDFを保存します。

ここで大事なのは、紙に印刷してもいい。でも元のPDFは消さない。ことです。

経理処理しやすいから印刷する。紙のファイルにも綴じる。それ自体は構いません。

ただし、PDFを削除し、紙だけ残す運用にはしません。

紙でもらった請求書は、そのままでいい

取引先から紙で請求書が届いた。店で紙の領収書をもらった。これは、その紙を保存すればOKです。わざわざスキャンする義務はありません。

検索しやすいから自分用にスキャンしておく、というのは構いません。その場合は、紙を正式な保存物として残し、PDFは自分の便利のためのコピーと考えればシンプルです。

一方、紙を捨ててスキャンデータだけを正式な保存物にしたいなら、スキャナ保存制度の要件を確認します。

経理1人の小規模事業者で紙保存に困っていないなら、無理に電子化する必要はありません。

一番忘れやすいのは「届かない領収書」

普通の請求書なら、郵送される。メールで来る。誰かから渡される。つまり、向こうから届きます。

だから比較的忘れにくい。

問題は、自分で取りに行かなければ手に入らない証憑です。

経理で特に忘れやすいもの

  • ECサイトの購入
  • Webサービスの月額料金
  • サーバー代・ドメイン代
  • 広告費
  • オンライン講座
  • アプリ・クラウドサービス
  • 出張時のホテル代

お金は自動的に支払われるのに、領収書は自動的に経理へ来ないことがある。

ここが危ないところです。

ECサイトは「買った」で終わりやすい

ネット通販では、商品を注文する。カードで決済する。商品が届く。カード明細が残る。
これで取引が全部終わった感覚になります。

でも経理では、領収書や請求書を取得して保存するところまでがあります。

ECサイトによっては、領収書がメールで届かず、購入履歴やマイページから自分でダウンロードしないといけません。

カード明細に載っているから安心、ではなく、必要な取引データを取得して保存します。

出張のホテル代は忘れやすい

出張も典型的です。

楽天トラベルやBooking.comなどでホテルを予約する。事前にカード決済する。ホテルへ泊まる。チェックアウトする。これで「出張終わり」となります。

でも、領収書をまだ取っていないことがあります。
特に事前決済では、現地でお金を払わないため、「領収書をもらう」という行動そのものが発生しません。

だから、予約 → 宿泊 → 領収書取得 → 保存までを一つの作業として考えます。

ホテル予約は領収書保存までが1セット

自動課金はさらに忘れやすい

月額サービスも注意します。

最初にカードを登録すると、その後は毎月自動で引き落とされます。人間が何もしなくても支払いが終わる。
だから、証憑を取得するきっかけがありません。

小規模事業者なら、毎月取りに行く証憑の一覧を作ってしまうのが簡単です。

サービス支払方法証憑の取得場所確認
ECサイトカード購入履歴□
ホテル予約カード予約サイト□
サーバーカード管理画面□
SaaSカードBilling画面□

「届く証憑」と「取りに行く証憑」を分ける

届く証憑は、届いたときに処理する。
取りに行く証憑は、月末に自分から回収する。

この2種類では、忘れ方が違います。

「取りに行く証憑」だけは月次チェックを作る。

経理1人では、これだけでもかなり効きます。

カード明細があることと、領収書があることは別の話

ここは、経理をしていて特に注意したいところです。

クレジットカードで支払うと、カード明細には利用日、利用先、金額などが残ります。そのため、「カード明細に載っているから、領収書はなくても大丈夫だろう」と思いやすい。

でも、カード明細に支払いの記録があることと、取引の証憑である領収書・請求書などを保存していることは別の話です。

カード明細は「このカードで、この金額を支払った」ことを確認する材料にはなります。

一方、領収書や請求書などには、何を購入したのか、どの取引についての支払いなのか、税率や消費税額、適格請求書発行事業者の登録番号など、カード明細だけでは分からない情報が記載されている場合があります。

カード明細がある=領収書・請求書を取らなくていい、とは考えない。

カード明細は「領収書の代わり」ではなく「取り漏れ確認」に使う

経理1人の小規模事業者なら、カード明細はむしろ、証憑を取り忘れていないか確認するための一覧として使うと便利です。

月末にカード明細を上から確認して、ECサイト、ホテル代、サーバー代、Webサービスなどの証憑が保存されているかを照らします。

見つからなければ、購入履歴やサービスの管理画面へ取りに行く。

支払い記録から逆算して、証憑の抜けを探す。

ポイント

「支払った証拠がある」と「必要な領収書・請求書などを保存している」は別。

カード明細を見て安心するのではなく、カード明細を使って証憑の取り漏れを探します。

システムなしなら「保存場所を1か所」にする

次に決めるのは保存場所です。

小規模事業者なら複雑な仕組みを作らなくても、電子取引データはここというフォルダを1か所決めます。

たとえば「電子取引 → 2026 → 01月、02月、03月…」のように月別で分けても構いません。

大事なのは、メール、ダウンロードフォルダ、デスクトップ、個人PC、クラウドなどにバラバラにしないことです。

最終的に1か所へ集めましょう。

ファイル名は「日付・金額・取引先」

専用システムがなくても、国税庁は規則的なファイル名を付けて検索できるようにする方法を示しています。

たとえば、20261031_110000_株式会社ABC.pdfのように、取引日付・取引金額・取引先を規則的に入れます。

小規模事業者なら、たとえばYYYYMMDD_金額_取引先_書類種類で統一すると分かりやすいです。

ファイル名が面倒ならExcel索引でもいい

国税庁は、Excelなどで索引簿を作る方法も例示しています。

No.日付金額取引先書類ファイル名
12026/10/31110,000ABC社請求書001.pdf

ファイル名を毎回細かく変更する方が楽か、Excelへ記録する方が楽か。自社で続けやすい方を選びます。

ただし、管理のためのExcelを増やしすぎて、かえって仕事を増やさない。ことも大事です。

売上5000万円以下なら検索要件が軽くなる場合がある

電子取引データは原則として、日付・金額・取引先などで検索できるようにする要件があります。

ただし、基準期間(原則として2課税年度前)の売上高が5000万円以下で、税務調査等の際に電子取引データのダウンロードに応じられる状態なら、検索要件が不要になる場合があります。

自社が該当するかは国税庁の最新要件を確認してください。

なお、検索要件が軽減されても、ファイル名や保存場所をある程度そろえておいた方が、自分が後で探すという意味で楽です。

改ざん防止は「事務処理規程」でも対応できる

タイムスタンプを使っていない小規模事業者も多いと思います。

電子取引データの改ざん防止措置には、タイムスタンプや訂正削除履歴が残るシステムだけでなく、訂正・削除防止の事務処理規程を作り、そのルールを守る方法もあります。

国税庁は法人用・個人事業者用の事務処理規程のサンプルも公開しています。

経理1人なら、月末はこの流れで確認する

  1. 届いたPDFを保存済みか確認
  2. ECサイトの領収書を取得
  3. ホテル・出張の領収書を取得
  4. SaaS・自動課金を確認
  5. カード・口座明細と証憑を照合
  6. 不足分を回収

「支払いはあるのに証憑がないもの」を探す。

経理1人の月次ルーティン

バックアップも忘れない

保存場所を1か所にまとめるなら、その場所が壊れたときのことも考えます。

PCのローカルフォルダだけなら、PC故障で全部失う可能性があります。

クラウドストレージ、外付けストレージ、社内バックアップなど、自社で無理なく続けられる方法を考えます。

高いシステムを入れるのは、手作業が苦しくなってからでもいい

小規模事業者で月数十件程度なら、最初から大掛かりなシステムを導入しなくても運用できる場合があります。

国税庁自身も、規則的なファイル名、Excel等の索引簿、事務処理規程といった、専用システムを使わない方法を示しています。

でも、取引数が増えた、担当者が増えた、複数拠点になった、毎月の保存作業だけで何時間もかかる、となったらシステム化を検討すればいい。

システム導入が目的ではありません。

電子帳簿保存法対応で仕事を増やしすぎない

法律対応だから、PDFをダウンロードする、名前を変更する、Excelへ登録する、紙にも印刷する、別の管理表にも入力する、会計ソフトにも入力する。

となったら、何のための電子化か分からなくなります。

不要な作業は増やさない。自社で必要な要件を確認したうえで、できるだけ一度の処理で終わるようにします。

経理1人なら、このチェックリストだけでもいい

  • 電子でもらった請求書・領収書をデータで残している
  • 自社から電子で送った取引書類も保存している
  • PDFを印刷したあと元データを消していない
  • 紙でもらったものを無理に電子化していない
  • 電子取引データの保存場所が1か所に決まっている
  • ファイル名または索引簿のルールが決まっている
  • ECサイトなど「取りに行く領収書」を確認している
  • ホテル・出張予約の証憑を取り忘れていない
  • SaaSや自動課金を月1回確認している
  • 訂正・削除防止のルールを決めている
  • カード・口座明細から証憑の抜けを確認している
  • バックアップがある

まとめ|小規模事業者は「漏らさない仕組み」を作る

電子帳簿保存法というと、難しい制度、専用システム、タイムスタンプ、そんな話に見えます。

でも、経理1人の小規模事業者なら、最初に考えることはもっとシンプルです。

データでもらったものは、データで残す。
紙でもらったものは、紙で残していい。
自分で取りに行く領収書を忘れない。

そのうえで、保存場所を1か所にする。ファイル名を統一する。月末にカード明細と照らす。訂正・削除防止のルールを決める。

小規模事業者の電子帳簿保存法対応では、「どう保存するか」以上に、「何を取り忘れるか」を考えることが大切です。

まずは今月のカード明細を開いて、「この支払い、領収書どこにある?」と一件ずつ確認してみてください。

参考:国税庁