「仕事がなかなか覚えられません。」
新人から、そんな悩みを聞くことがあります。
教えてもらったときは分かったつもりなのに、次の日には忘れている。
メモを見ないと手順が分からない。
少し違う仕事になると、急にできなくなる。
そんなことが続くと、
「自分は仕事を覚えるのが遅いのかもしれない。」
と不安になるかもしれません。
でも私は、仕事は何でもかんでも丸暗記するものではないと思っています。
もちろん、最初は手順を覚える必要があります。
ただ、本当に大切なのはその次です。
「何をするのか」だけではなく、「なぜそうするのか」を理解すること。
理由まで理解できるようになると、仕事は忘れにくくなります。
そして、少し状況が変わっても、自分で考えて対応できるようになります。
手順だけ覚えると、少し違うだけで止まる
新人の頃は、教えてもらった仕事を一生懸命覚えようとします。
- 「最初にこれをする。」
- 「次にこれをする。」
- 「最後にこれを確認する。」
真面目な人ほど、言われた順番をそのまま頭に入れようとするかもしれません。
もちろん、最初はそれでいいと思います。
何も分からない状態なら、まず型を覚える必要があるからです。
ただ、手順だけを覚えていると、少し状況が変わっただけで分からなくなることがあります。
- 使う資料が違う。
- 担当する案件が違う。
- いつもと条件が少し違う。
すると、「次、何するんだっけ?」となってしまう。
さらに怖いのが、意味を理解していない作業です。
「いつもやっているけど、何のためかは知らない。」
そういう作業は、
「これくらい飛ばしてもいいだろう。」
と省略してしまうことがあります。
でも、その作業には理由があるかもしれません。
品質を守るため。
次の人が困らないため。
理由を知らなければ、「変えていいところ」と「変えてはいけないところ」の区別がつきません。
だから私は、暗記は仕事を覚えるためのスタートラインでしかないと思っています。
「なぜやるのか」を理解すると忘れにくい
仕事には、
「これは必ずやる。」
「この確認は飛ばしてはいけない。」
という手順があります。
そして、その多くには理由があります。
- ミスを防ぐため。
- お客様に迷惑をかけないため。
- 次の担当者が困らないため。
- 数字や情報を間違えないため。
そこまで理解すると、ただの「作業手順」ではなくなります。
例えば、
「この数字は必ずダブルチェックしてください。」
とだけ教えられれば、そのうち確認自体を忘れるかもしれません。
でも、
「ここを間違えると、そのまま請求金額や顧客への資料に反映される。」と分かっていれば、
「ここは確認しないとまずい。」と自分で考えられるようになります。
あるいは、
「このメールには必ずこの人をCCに入れてください。」と言われた時も、ただ決まりとして覚えるだけではなく、
「この人が次の対応をするから、情報共有が必要なんだ。」と理解していれば忘れにくくなります。
これは大きな違いです。
仕事が覚えられないと悩んでいる人ほど、
「何をすればいいですか?」だけではなく、
「これは何のためにやるんですか?」
まで聞いてみてほしいと思います。
理由が分かると、仕事はただの暗記ではなくなります。
覚えた人と、理解した人は違う
私は、
「仕事を覚えた」と「仕事を理解した」は
少し違うと思っています。
仕事を覚えた人は、教わった状況ならできます。
- いつもと同じ条件。
- いつもと同じ順番。
- いつもと同じやり方。
それなら問題なく進められる。
でも、仕事を理解している人は、条件が少し変わっても考えられます。
「今回はここが違うから、この部分は変えよう。」
「この工程は安全に関わるから、ここは変えてはいけない。」
「判断できないから、ここだけ確認しよう。」
こんなふうに考えられる。
つまり、覚えている人は、教わったことができる。
理解している人は、状況が変わっても判断できる。
ここが大きな違いだと思っています。
メモは取るだけでは仕事を覚えない
仕事を覚えるために、「とにかくメモを取りなさい。」
と言われることがあります。
私も、メモを取ること自体は大切だと思います。
でも、メモは書いただけでは意味がありません。
教えてもらいながら一生懸命メモを取って、それ以降一度も開かない。
これでは、ノートに仕事を覚えさせただけです。
自分の頭には残りません。
メモを取ったら、その日のうちに一度見返す。
翌日、その仕事をする前にもう一度見る。
そして実際にやってみる。
分からなければ確認する。
新人の頃なら、それで十分です。
一回教わっただけですべて覚えようとする必要はありません。
むしろ、
教わる → やってみる → 分からないところを確認する
これを何度か繰り返した方が、仕事は身につきます。
そしてメモには、
「①これをする、②これをする」だけではなく、
「なぜこれをするのか」も書いておく。
これだけで、見返したときの理解度はかなり変わります。
覚えられないことより、分かったふりの方が困る
仕事がなかなか覚えられないと、焦ることがあります。
覚えられない。怒られる。焦る。
焦っているから説明が頭に入らない。
そしてまた失敗する。
そんな悪循環に入る人もいます。
でも、教える側からすると、覚えるのが少し遅いことより、分かったふりをされる方が困ります。
分からないなら、「ここが分かりません。」と言ってくれれば説明できます。
忘れたなら、メモを確認して、それでも分からなければ聞けばいい。
一番困るのは、分かっていないのに勝手に進めることです。
仕事は、一日ですべて覚えるものではありません。
今日教わったことを、一つできるようになる。
明日もう一度やってみる。
昨日より少し分かることが増える。
その積み重ねです。
新人のうちは、分からないことがあるのが普通です。
問題なのは、分からないことではありません。
分からないのに確認しないこと。
分かったふりをすること。
そして、何も改善せず同じ失敗を繰り返すことです。
型を覚え、理由を理解してから応用する
以前、
「自己流は遠回り。まずは型を身につけた方がいい」
という記事を書きました。
私は今でも、この考えは変わりません。
最初から、「自分はこうした方がいいと思います。」と自己流で仕事をするより、まずは教えてもらった型を身につける。
ただし、型をそのまま暗記して終わりではありません。
次に考えるのが、「なぜ、このやり方なのか。」です。
理由を理解すると、
「ここは絶対に変えてはいけない。」
「ここなら状況に合わせて変えてもいい。」
という違いが少しずつ分かるようになります。
そこで初めて、応用できます。
つまり、
型を覚える➡意味を理解する➡自分で考えて応用する
この順番です。
最初から自己流に走るのでもない。
ずっと言われた通りにしかできないのでもない。
型を身につけてから、型を破る。
仕事ができるようになる過程は、結局ここにあるのだと思います。
仕事だけではない。勉強も同じ
この考え方は、仕事だけに当てはまりません。
勉強でも同じです。
公式だけを丸暗記していると、そのままの問題なら解けても、少し形を変えられただけで分からなくなることがあります。
でも、「なぜこの答えになるのか。」
「この数字は何を意味しているのか。」
まで理解していれば、問題の形が変わっても考えることができます。
料理だって同じです。
レシピに、「中火で5分。」と書いてあるから5分焼く。
それだけを覚えている人より、
「なぜ中火なのか。」
「なぜここで火を弱めるのか。」
まで分かっている人の方が、違う材料や違う料理にも応用できます。
仕事も勉強も料理も、根っこは同じです。
覚えたことしかできない人と、理解している人では、応用力が変わります。
まとめ|仕事は「覚える」だけで終わらせない
仕事が覚えられないと、「早く覚えなきゃ。」と焦ってしまうかもしれません。
でも、最初から全部覚える必要はありません。
まずは教わった型を一つずつ覚える。
実際にやってみる。
分からなければ確認する。
一度聞いたことは、メモを見返して次につなげる。
そして少し余裕が出てきたら、
「なぜ、このやり方なんだろう?」
と考えてみてください。
理由まで理解できれば、仕事は忘れにくくなります。
そして、少し違う状況でも自分で考えられるようになります。
仕事は、手順を覚えるゲームではありません。
型を覚え、意味を理解し、応用する。
私は、そこまでできるようになって初めて、本当の意味で「仕事を覚えた」と言えるのだと思います。


