「僕はこう思います。」
新人からそう言われることがあります。
意見を持つことは、とても大切です。
でも私は、その意見の内容よりも順番が気になります。
まだ一度も教わったやり方をやっていない。
それなのに、「こっちの方がいいと思います。」
と言われると、
まずは一度、やってみようよ。
と思ってしまうのです。
「型」を知らなければ比較はできない

例えば料理を教えてもらっているとします。
「まずは弱火で炒めて。」
そう言われたのに、
「僕は強火の方がいいと思います。」
と言われたらどうでしょう。
きっと多くの人が、
「いや、教えた通りにやってよ。」と思うはずです。
強火がいいのか、弱火がいいのか。
それを判断できるのは、両方を経験した人だけです。
弱火で作ったこともないのに、「強火の方がいい」と言っても、それは比較ではありません。
ただの想像です。
仕事もまったく同じだと思います。
自己流は、改善ではなく遠回りになる

現場でも、「このやり方でやってみて。」
と教えることがあります。
すると、「僕はこっちの方が効率がいいと思います。」
と返ってくることがあります。
もちろん、本当にもっと良い方法があることもあります。
でも、そのやり方を一度も再現したことがない人には、それが本当に良い方法なのか判断する材料がありません。
比較するには、基準が必要です。
その基準こそが「型」です。
型を知らないまま自己流で進めても、それは改善ではありません。
ただ遠回りをしているだけなのです。
ベテランの型には、見えていない理由がある

初心者には、まだ見えていない景色があります。
「なんでこんな面倒なやり方をするんだろう。」
そう思うこともあるでしょう。
でも、ベテランは何十回、何百回と失敗を繰り返した上で、そのやり方にたどり着いています。
一見すると非効率に見える作業にも、
- ミスを防ぐため
- 効率を上げるため
- 後から応用しやすくするため
- 過去の失敗を繰り返さないため
など、初心者には見えない理由が隠れていることが少なくありません。
私は以前、「3人のレンガ職人」の記事で、目的や景色は経験を積んで初めて見えてくるという話を書きました。今回の「型」も同じです。見えていない景色は、まず経験することで見えてきます。
だからこそ、一度は型通りにやってみる価値があります。
理解してから改善するのと、理解しないまま変えるのとでは、結果は大きく変わります。
やってみて初めて、
「ああ、このためだったのか。」
と理解できることが、本当にたくさんあるのです。
型を身につけることはゴールではありません。本当の成長は、その先から始まります。
型を身につけた人だけが、型を破れる

ここで勘違いしてほしくないのは、
「言われた通りにやれ。」
と言いたいわけではありません。
本当に成長する人は、いずれ必ず型を破ります。
でも、その順番が大切なのです。
武道でも、書道でも、料理でも、仕事でも、まずは型を身につける。
その型を理解した上で、
「ここはもっと良くできる。」と考える。
だから、その改善には価値があります。
逆に、
型を知らないままの自己流は、改善ではなく思いつき
で終わってしまいます。
自由とは、基礎を身につけた人が手に入れられるもの

この考え方は、昔から「守・破・離」という言葉で表されています。
- 守…まずは教わった型を守る。
- 破…型を理解した上で改善する。
- 離…自分だけの型を作る。
初心者ほど、「自由にやりたい」と思うものです。
でも実際は逆なんです。
型を身につけた人ほど、
「ここは変えてもいい。」
「ここは絶対に変えてはいけない。」
その違いが分かるようになります。
だから、本当の自由を手に入れられるのです。
まとめ
私は、「反論するな」と言いたいわけではありません。
意見を持つことは、とても大切です。
でも、その意見が本当に価値を持つのは、一度型を身につけてからです。
まずは教わった通りにやってみる。
その上で、「ここはもっと良くできると思います。」
と伝えれば、その意見には経験という根拠があります。
周りも耳を傾けてくれるでしょう。
型は、自由を奪うものではありません。
型は、自由になるための土台です。
遠回りに見える「まずは型を学ぶ」という道が、実は一番の近道なのだと、私は何度も現場で感じてきました。
良い教え方も大切ですが、教わる側の姿勢も同じくらい大切です。




