仕事ができる人とは、どんな人でしょうか。
知識がある。
判断が速い。
経験が豊富。
専門的なスキルが高い。
もちろん、どれも大切です。
でも、管理職になると、それだけでは足りないと私は思っています。
どれだけ仕事に詳しくても、自分の感情をコントロールできない。
相手がどう感じるかを考えない。
部下が困っていることに気づかない。
そんな人が上司になると、組織はうまく回りません。
そこで重要になるのが、EQです。
EQは、簡単に言えば、
自分や相手の感情を理解し、それを仕事や人間関係の中で適切に扱う力です。
私は特に、管理職ほどEQが必要になると思っています。
EQとは?感情を扱う力のこと
EQは、感情知能やEmotional Intelligenceと呼ばれる考え方と関連する言葉です。
難しく考える必要はありません。
仕事で言えば、「今、自分はイライラしているな」と自分の状態に気づく。そのまま部下に怒りをぶつけない。
相手が言いにくそうにしていれば、「何か話しづらい理由があるのかもしれない」と考える。
自分の言い方によって、相手がどう受け取るかを考える。
こうしたことも、EQに関係する力だと思います。
つまりEQが高いというのは、いつもニコニコしていることでも、誰にでも優しいことでもありません。
感情をなくすことでもありません。
自分にも相手にも感情があると理解したうえで、どう行動するかを考えられることです。
私が見てきた「EQが低い上司」は正反対の2タイプだった
私はこれまで、EQが低いと感じる上司を何人か見てきました。中でも印象に残っているのが、まったくタイプの違う二人です。
一人は、とても分かりやすいタイプでした。
怒れば暴言を吐く。
感情がさらに強くなれば、暴力にまで出る。
自分の怒りを、そのまま周囲にぶつける人でした。
これは分かりやすく、
自分の感情をコントロールできないタイプです。
でも、もう一人はまったく違いました。
怒鳴ることもない。暴力もない。
いつも感情的になるわけでもありません。
それなのに私は、
「この人、自分以外の人間をゲームのNPCか何かだと思っているんじゃないか」と感じることがありました。
うまく具体例を一つ挙げるのは難しいのですが、とにかく自分以外の人間への関心が薄い。
相手がどう感じるか。何を考えているか。今どんな状態なのか。そういったことに、あまり興味がないように見えました。
この二人は、表面的には正反対です。
一人は感情をむき出しにする。
もう一人は感情的にはならない。
でも私は、どちらも管理職として大きな問題を抱えていたと思っています。
EQが低いというのは、怒りっぽいことだけではありません。
他人の感情に関心を持てないことも、仕事では大きな問題になります。
管理職ほどEQが必要になる理由
一般社員なら、自分の仕事をきちんとこなすことで成果を出せる場面も多くあります。
でも管理職になると、自分一人で成果を出せばいいわけではありません。
部下に仕事を任せる。相談を受ける。注意する。
評価する。育てる。
人を通して仕事を進める場面が一気に増えます。
ここでEQが低いと、問題が起きます。
- 部下がミスを報告しなくなる。
- 相談しなくなる。
- 本音を言わなくなる。
- 指示されたことだけやるようになる。
- 最悪の場合、何も言わずに辞めていく。
感情のまま怒られることを恐れると、部下はミスを隠し、報告が遅れることがあります。詳しくは、【部下がミスを隠す】怒るより「早く頼っていい」を教えようで書いています。
上司本人は、「最近の若い人は何を考えているか分からない」と思うかもしれません。
でも実際には、話しても無駄だと思われている可能性もあります。
管理職になるほど、自分の言葉や態度が周囲に与える影響は大きくなります。
だからこそ、EQが必要になります。
EQが高い上司は「優しい上司」とは限らない
EQという話をすると、「部下に優しくしなければいけないのか」と思う人もいるかもしれません。
私はそうは思いません。
- 仕事でダメなものはダメと言う。
- ミスがあれば注意する。
- 期限を守らなければ指摘する。
- 必要なら厳しい判断をする。
管理職なら当然です。
ただし、
何を言うかだけではなく、どう言うかまで考える。
ここが違います。
例えば、部下がミスをしたとします。
感情のまま、「何回言ったら分かるんだ!」と怒鳴る。
これでは、部下が学ぶより先に、「次は怒られないようにしよう」と考えるようになるかもしれません。
それよりも、「何が起きた?」「どこで判断を間違えた?」「次に同じ状況になったらどうする?」と原因を確認する。
必要な注意は、そのあとでもできます。
優しくすることが目的ではありません。
問題を解決し、次に同じことを起こさないことが目的です。
そのために自分の感情を扱う。
これもEQだと思います。
EQが低いと、自分では気づきにくい
EQの難しいところは、自分では気づきにくいことです。
怒鳴っている本人は、「俺は厳しく指導しているだけ」
と思っているかもしれません。
相手の気持ちを考えない人も、「仕事なんだから感情なんて関係ない」と思っているかもしれません。
でも仕事は、人間同士でやっています。
感情を無視したからといって、感情がなくなるわけではありません。むしろ表に出なくなるだけです。
- 部下が何も言わなくなった。
- 相談されなくなった。
- 会議で意見が出なくなった。
- 退職するまで不満に気づかなかった。
そうなってから、「何で何も言わなかったんだ」
と言っても遅いことがあります。
実際に退職相談を受けたときも、理由を決めつけず本人の話を聞く必要があります。部下から退職相談されたら?引き止める前に上司が考えることで、最初に確認したい点をまとめています。
だから管理職ほど、自分がどう見えているかを考える必要があります。
EQを高めるなら、まず自分の感情に気づく
EQを高めるといっても、特別な訓練から始めなくてもいいと思います。
まずは、自分の感情に気づくことからです。
- イライラしている。
- 焦っている。
- 疲れている。
- 腹が立っている。
まず、それを認識する。
感情そのものが悪いわけではありません。
私だって腹が立つことはあります。
重要なのは、腹が立ったから、そのまま相手にぶつける
という行動を選ばないことです。
「今ちょっと感情的になっているな」
と気づくだけでも、一度考える余地ができます。
相手の感情を当てる必要はない
もう一つ大事なのは、相手の気持ちを勝手に決めつけないことです。
「こいつはやる気がない」
「どうせ何も考えていない」
「最近の若い人はこうだ」
そう決めてしまうのは簡単です。
でも、本当にそうかは本人にしか分かりません。
だから私は、相手の感情を完璧に読む必要はないと思っています。
「何か理由があるかもしれない」と思えるだけでも違います。分からなければ聞けばいい。
「何か困っている?」
「どう考えている?」
「何でそうした?」
相手の感情を決めつけず、話しやすい場で聞く方法は、【1on1で何を話す?】本音を聞くために管理職ができることでも詳しくまとめています。
相手に興味を持つ。
これだけでも、NPCのように人を見る状態からはかなり離れます。
管理職に必要なのは、人に興味を持つこと
私は、管理職に必要なEQの根っこは、
人に興味を持つことではないかと思っています。
部下と友達になる必要はありません。
プライベートまで聞く必要もありません。
でも、この人は何を考えているんだろう。
何が得意なんだろう。何に困っているんだろう。
どう伝えれば分かりやすいだろう。
そこには興味を持つ。
友達になることと、仕事の話ができる関係を作ることは別です。【上司と部下の距離感】仲良くなるより「仕事の話ができる関係」を作ろうで、適切な距離感を詳しく書いています。
管理職は、人を使う仕事ではありません。
人と一緒に成果を出す仕事です。
だから、仕事の知識だけでは足りない。
相手が人間である以上、感情を扱う力も必要になります。
まとめ|EQは「感情的にならない力」だけではない
EQというと、「怒らない人」「冷静な人」を想像するかもしれません。
でも、それだけではありません。
- 自分の感情に気づく。
- 感情をそのまま相手にぶつけない。
- 相手がどう感じるかを考える。
- 分からなければ聞く。
- 自分の言動が周囲に与える影響を考える。
こうした力も含まれます。
私はこれまで、感情を制御できず周囲にぶつける上司と、感情的ではないけれど他人への関心が極端に薄い上司、両方を見てきました。タイプはまったく違います。
でも、管理職として人と働くなら、どちらにも足りないものがあります。
管理職になるほど、自分の仕事だけではなく、人を見る仕事が増える。
だから私は、これからの管理職には、知識や経験と同じくらいEQが重要になると思っています。

