「管理職にはなりたくない。」
そう思う人がいても、私は不思議だとは思いません。
管理職になれば、自分の仕事だけを終わらせればいいわけではなくなります。
部下の育成。
進捗管理。
トラブルへの対応。
人間関係の調整。
数字や結果への責任。
会社によっては、それだけ仕事や責任が増えても、給料が大きく上がるわけではありません。
「それなら、今の仕事を続けたい。」
と思う人がいるのも分かります。
私は、管理職になりたくないなら、無理にならなくてもいいと思っています。
ただし、一つだけ考えておいた方がいいことがあります。
管理職にならないなら、
その代わりに自分は何で価値を上げていくのか。
出世だけが成長ではありません。
でも、
「出世しない」と「成長しない」は別の話です。
管理職を断ること自体より、その先でどんなキャリアを作っていくのか。
そこまで考えて選んだ方がいいと思っています。
管理職になりたくない=向上心がない、ではない
管理職を断ると、
「向上心がないと思われるのではないか。」と心配する人もいると思います。
でも私は、管理職になりたくないことと、向上心がないことは別だと思っています。
自分で仕事をする能力と、人を管理する能力は同じではありません。
仕事がものすごくできる人でも、人に教えるのは苦手なことがあります。
反対に、自分一人の作業能力は飛び抜けていなくても、周囲をよく見て、人を動かし、チーム全体で結果を出せる人もいます。
求められる能力が違うんです。
だから、
- 「技術を極めたい。」
- 「営業として数字を作り続けたい。」
- 「専門分野で強くなりたい。」
という道を選ぶのも、立派なキャリアです。
管理職にならないからといって、成長していないわけではありません。
自分に向いていない役割を無理に引き受けるより、自分が価値を出せる場所を伸ばした方が、本人にも会社にもいい場合があります。
自分が仕事をできることと、人を育てられることの違いについては、こちらの記事でも書いています。
本当に嫌なのは「管理職」なのかを考える
管理職を断る前に、一度考えてみてほしいことがあります。
本当に嫌なのは、管理職そのものでしょうか。
同じ「管理職になりたくない」でも、理由はかなり違います。
- 「人を管理する仕事そのものが嫌。」
- 「責任ばかり増えるのが嫌。」
- 「管理職になると残業が増えそう。」
- 「給料と責任が釣り合っていない。」
- 「今の上司を見ていると、ああはなりたくない。」
- 「今の仕事が好きだから、現場を離れたくない。」
ここは分けて考えた方がいいです。
特に大きいのが、
「管理職になりたくない」と「今の会社の管理職にはなりたくない」は同じではないということです。
人をまとめたり、仕事全体を動かしたりすることには興味がある。
でも、今の会社では責任だけ増えて待遇が変わらない。
それなら、嫌なのは管理職という役割ではなく、その会社の制度かもしれません。
「部下を何人も持つのは嫌だけど、プロジェクトをまとめる仕事ならやってみたい。」
という人もいるでしょう。
役割が嫌なのか。
待遇が嫌なのか。
まずは、そこを分けてみる。
管理職の打診を受けたからといって、すぐに「やります」「やりません」の二択で考える必要はありません。
仕事内容。責任の範囲。待遇。
どこまで自分に決裁権があるのか。
分からないことがあるなら、確認してから決めても遅くないと思います。
管理職にならないなら、別の軸で価値を上げる
私は、この記事で一番大事なのはここだと思っています。
管理職にならない。
それ自体は、まったく問題ありません。
ただ、
- 「人の管理はしたくない。」
- 「難しい仕事も増やしたくない。」
- 「新しいことも覚えたくない。」
- 「責任も増やしたくない。」
でも、「給料や評価は上げてほしい。」
となると、会社との期待はズレやすくなります。
会社が人を評価するときには、基本的に、
「以前より何を任せられるようになったか」が一つの材料になります。
管理職なら、人を動かしたり、チームの結果に責任を持ったりすることで、任される範囲が広がります。
では、管理職にならない人はどうするか。
別の形で、任せられるものを増やせばいい。
- 技術を高める。
- 資格を取る。
- 難しい案件を任せられる人になる。
- 売上を作る。
- 専門知識を深める。
- 重要な顧客を任せられる人になる。
- 後輩の技術的な相談に乗れる人になる。
「あの分野なら、まずこの人に聞こう。」と言われる存在になる。役職以外にも、価値を上げる方法はいくらでもあります。
ここで大事なのは、
管理職を断る=責任を全部断る、ではない
ということです。
人の管理という責任は引き受けない。
その代わり、専門家として難しい判断を引き受ける。
営業として大きな顧客を任される。
技術者として難しい仕事を任される。
そういうキャリアもあります。
私は、成長=出世ではないと思っています。
でも、
「管理職になりたくないから、これ以上何もしない」
となってしまうと、話は違います。
出世しないなら、別の道で強くなる。
その方が、今の会社に残るにしても、いつか別の場所へ行くにしても、自分の選択肢を増やせます。
管理職になると、見えるものが変わる
ここまで読むと、
「では、管理職になるメリットはないのか。」と思う人もいるかもしれません。
もちろん、そんなことはありません。
私自身、仕事をする側から、人を管理する側、会社全体を見る側へと立場が変わる中で、見えるものはかなり変わりました。
働く側にいると、
「もっと人を増やせばいい。」
「もっと給料を上げればいい。」
「この仕事は自分に任せればいい。」
と思うことがあります。
でも、管理する側になると、一人だけを見て決められないことが分かります。
人件費がある。教育にかかる時間がある。ほかの社員とのバランスもある。
部下が失敗したときも、「本人が失敗しました。」だけでは終われません。
任せた側にも責任があります。
管理職は、単に偉くなることではありません。
自分以外の人の仕事や成果にも責任を持つ役割です。
大変です。
だから、なりたくない人がいるのも分かります。
でも、その立場だからこそ見えるものもあります。
人に仕事を任せる難しさ。
自分一人ではなく、チームで結果を出す難しさ。
会社全体を見ながら判断する経験。
管理職になるかどうかを考えるなら、負担だけではなく、「その役割で何を得られるのか」も一度考えてみていいと思います。
管理職のつらさは、責任が増えることだけではありません。上司と部下の間で判断を続け、誰にも相談できない孤独を感じることもあります。
→【管理職の孤独】責任は持つ。でも、全部ひとりで抱えなくていい
管理職を断る前に考えたい3つのこと
もし今、管理職や昇進の話が来ていて迷っているなら、私は次の3つを考えます。
1.何が嫌なのかを分けて考える
管理職という仕事そのものが嫌なのか。
責任が増えることが嫌なのか。
待遇が悪いことが嫌なのか。
今の会社の管理職が魅力的に見えないのか。
ここが違えば、答えも変わります。
「管理職は絶対嫌だ。」
と思っていたのに、条件を整理したら、
「この働き方ならやってもいいかもしれない。」
となることもあります。
逆に、仕事内容まで確認して、
「やっぱり自分には合わない。」なら、断る判断もしやすくなります。
2.管理職にならないなら、何を伸ばすのか
管理職にならないなら、次に考えたいのがこちらです。
自分は何で強くなるのか。
- 技術。
- 資格。
- 営業力。
- 専門性。
- 顧客との関係。
- 難しい仕事を処理する力。
どれでもいいと思います。
管理職にならない代わりに何を伸ばすのかが決まっていれば、「昇進を断った」のではなく、「別のキャリアを選んだ」
と言えます。
「会社に依存しない働き方」を考えるうえでも、自分が外へ持ち出せる強みを増やしておくことは大切です。
3.3年後も、その選択に納得できそうか
今だけを見ると、「面倒だからやりたくない。」と思うかもしれません。
でも、一度3年後を想像してみてください。
- 今と同じ仕事を続けたいのか。
- もっと専門性を高めていたいのか。
- 別の仕事にも挑戦したいのか。
もし3年後に、「あのとき管理職を断ってよかった。」
と思える道が見えているなら、その選択は十分ありだと思います。
逆に、
「本当は少し怖いだけかもしれない。」
「一度くらい経験してみてもいいかもしれない。」
と思うなら、挑戦する選択もあります。
大切なのは、怖さだけで決めないことです。
管理職にならなくてもいい。でも、そこで止まらない
管理職になりたくないこと自体を、甘えだとも逃げだとも思いません。
人には向き不向きがあります。
専門職として働き続けた方が力を発揮できる人もいます。
営業として数字を作り続ける人もいる。
技術で会社を支える人もいる。
管理職にならないキャリアがあっていいと思います。
ただし、
「管理職にならない」で考えることを終わらせない。
これだけは大事です。
出世しないなら、何を伸ばすのか。
何を任せられる人になりたいのか。
3年後、どんな仕事をしていたいのか。
そこまで考えて選んだなら、管理職を断ることは逃げではありません。
「管理職にならない」を選ぶのではなく、「管理職以外の道を選ぶ」。
出世だけが成長ではありません。
でも、出世しないことを、成長を止める理由にもしない。
管理職になるかどうかより、その先で自分がどう成長していくのか。
私は、そちらの方が大切だと思っています。



