【仕事の属人化】「あの人しかできない」をなくす方法

仕事の属人化をなくす 仕事術

「この仕事は、○○さんしか分からない。」

よく聞く言葉ではないでしょうか。

一見すると、その人が頼られている証拠にも見えます。
でも、その人が休んだ瞬間に仕事が止まる。
異動したら誰も分からない。
退職したあとに、何をどうしていたのか分からなくなる。

それは、組織としてはかなり危険な状態です。

私は、属人化をなくすことは、誰でも同じ能力になることではないと思っています。

「あの人が一番詳しい。」
「あの人に任せた方がうまい。」
それ自体は問題ありません。

問題なのは、
「あの人がいないと仕事が止まる」ことです。

最低限、ほかの人でも仕事をつなげられる。
どこを見ればいいか分かる。
判断できなければ、誰に確認すればいいか分かる。

そこまで残しておく。

今回は、仕事の属人化がなぜ起きるのかと、現実的にどう減らしていけばいいのかを考えてみます。

属人化は「できる人」に仕事が集まるところから始まる

属人化は、最初から誰かが意図して作るとは限りません。

むしろ、「この人に任せた方が早い。」というところから始まることが多いと思います。

仕事ができる人に頼む。
その人は経験もあるので、すぐ終わらせる。
次もその人に頼む。また早く終わる。

すると少しずつ、「この仕事は○○さん。」という状態ができていきます。

本人からしても、
「人に説明するより、自分でやった方が早い。」と思うことがあります。

これは、短期的には本当にその通りです。
自分なら10分で終わる仕事を、人に教えながらやれば30分かかるかもしれません。

最初は間違えることもあります。質問もされます。
だから忙しいと、「もう自分でやった方が早い。」となる。

でも、それを毎回続けていると、
その人しかできない仕事が完成します。

そして今度は、「自分しかできないから忙しい。」となる。

  1. 忙しいから教える時間がない。
  2. 教えないから自分しかできない。
  3. 自分しかできないから、さらに仕事が集まる。

この繰り返しです。

「自分でやった方が早い」は、今日だけを見れば正しい。
でも、それをずっと続けると、長い目では本人も組織も苦しくなります。

「あの人が一番詳しい」と「属人化」は違う

属人化の話になると、
「全部誰でもできるようにしないといけないのか。」
と思う人もいるかもしれません。

私は、そこまで均一にする必要はないと思っています。

  • 専門知識が高い人。
  • 営業が得意な人。
  • システムに詳しい人。
  • 難しい顧客対応がうまい人。

そういう人がいることは、会社にとって強みです。

問題なのは、
知識や情報まで本人の頭の中にしかない状態です。

例えば、

  • 顧客とのこれまでの経緯を、その人しか知らない。
  • 資料の保存場所を、その人しか知らない。
  • 請求方法の特殊なルールを、その人しか知らない。
  • トラブル時の判断基準を、その人しか知らない。

これでは、その人がいなくなった瞬間に仕事が止まります。

属人化をなくす目的は、全員を同じ能力にすることではありません。

その人がいなくても、
「最低限、次の人が仕事をつなげられる状態」を作ることです。

得意な人は、得意なままでいい。
ただ、仕事そのものまで一緒に抱え込まない。

この違いは大きいと思います。

マニュアルを作るだけでは属人化は消えない

属人化をなくそうとすると、
「ではマニュアルを作ろう。」となることがあります。

もちろん、手順を残すことは大切です。でも私は、手順だけを書いたマニュアルでは足りないと思っています。

例えば、

1.システムを開く
2.このボタンを押す
3.数字を入力する
4.PDFを出す

ここまで書いてあったとします。
いつも通りなら、それでできます。

でも、

  • 「数字が合わない。」
  • 「いつもの取引先だけ条件が違う。」
  • 「締め日を過ぎて修正が来た。」

となった瞬間に止まります。

なぜなら、仕事は手順だけではなく、判断も含まれているからです。

残したいのは、

  • 何をするのか。
  • 何のためにするのか。
  • どこを確認するのか。
  • 何を基準に判断するのか。
  • いつもと違うときはどうするのか。
  • 自分で判断できないときは誰に確認するのか。

こういう部分です。

「Aを押してBをする。」だけではなく、
「なぜそうするのか」まで残す。

それがないと、少し条件が変わっただけで、また元の担当者を呼ぶことになります。

仕事を覚えるときも、手順を覚えるだけでは応用できません。
理由や判断基準まで理解することが大切です。

仕事を「覚える」と「理解する」の違いについては、こちらの記事でも書いています。

全部ではなく「止まると困る仕事」から共有する

属人化をなくそうとして、
「全業務を洗い出して、全部マニュアル化しよう。」
と始めると、それだけで大仕事になります。

私は、最初から全部やる必要はないと思っています。
まず見るのは、

その人が明日休んだら止まる仕事です。

さらに、止まったら、どれくらい困るのか。
いつまでに処理しなければならないのか。
ここで優先順位をつけます。

例えば、今日対応しなくても困らない社内整理。
これは後回しでもいい。

一方で、今日中に返事が必要な顧客対応。月末の請求。
支払い。締切のある申請。
こういう仕事は止まると困ります。

なら、そこから共有していく。

全部の属人化を一気になくす必要はありません。
「止まると困る仕事」から減らす。

この方が現実的です。

そして、マニュアルを完璧に作ること自体を目的にしないことも大切だと思います。
きれいな資料を作って満足しても、誰も使わなければ意味がありません。

目的はマニュアル作成ではなく、
仕事が止まらない状態を作ることです。

人に渡して初めて、足りない情報が分かる

自分では、「これだけ書けば分かるだろう。」と思っていても、実際に人へ渡すと質問されます。

「この場合はどうしますか?」
「この数字はどこから取りますか?」
「ここが違ったときは誰に聞きますか?」

そこで初めて、
「そうか。そこは頭の中で判断していた。」と気づく。

私は、属人化をなくすなら、この過程が必要だと思っています。
完璧なマニュアルを作ってから渡すのではありません。

まず渡してみる➡やってもらう➡質問される
➡不足していた情報を足す
➡もう一度やってもらう。

これを繰り返す。

任せることで、仕事は初めて整理されます。

自分一人でずっとやっていると、何を見て判断しているのか。どこで迷いやすいのか。どこが例外なのか。
自分でも分からなくなっていることがあります。

人へ説明することで、暗黙の判断が言葉になります。

それが仕組みに変わっていきます。

「自分でやった方が早い」をいつか手放す

仕事を任せると、最初は時間がかかります。

教える。確認する。間違いを直す。もう一度説明する。
その間だけを見れば、自分でやった方が早いです。

でも、そこで任せることをやめたら、ずっと自分でやり続けることになります。
半年後も。一年後も。三年後も。
同じ仕事を自分が抱えています。

これは、本人にとっても良い状態とは限りません。

いつまでも定型業務を手放せなければ、新しい仕事をする時間もできません。
改善する時間もない。考える仕事も増やせない。
後輩を育てることもできない。

だから、

仕事を任せることは、相手のためだけではありません。
自分が次の仕事へ進むためでもあります。

属人化をなくしても、その人の価値は下がらない

中には、
「全部教えたら、自分はいらなくなるのではないか。」
と感じる人もいるかもしれません。

  • 自分しかできない仕事がある。
  • 自分しか分からない。
  • みんなが自分に聞きに来る。

それが、自分の価値のように感じることもあります。

でも私は、「自分しか分からない状態」を守ることと、「自分に価値があること」は別だと思っています。

10年前に覚えた仕事を、10年間ずっと自分しかできない状態にしておく。

それよりも、その仕事を誰かに渡す。
自分は次の仕事を覚える。

人を育てる。新しい仕組みを作る。
こちらの方が、その人自身の価値も上がります。

仕事を手放すことは、自分の価値を手放すことではありません。

むしろ、
次の仕事へ進むために、今の仕事を仕組みに変える。

そう考えた方がいいと思っています。

仕事に慣れ、同じことを続けるだけでは成長を感じにくくなることがあります。
そんなとき、仕事を人へ渡し、自分が次の課題へ進むことも一つの成長です。

属人化をなくすのは、人を不要にするためではない

属人化をなくすというと、
「誰でもできる仕事にする。」
「その人がいなくても困らなくする。」
という言葉だけが目立ちます。

でも、目的はその人を不要にすることではありません。
むしろ逆です。

定型業務を仕組みにする。
情報を共有する。
判断基準を残す。
ほかの人でも進められるようにする。

そうすれば、その人は、もっと難しい仕事に時間を使えます。

会社としても、一人が休んだだけで仕事が止まる状態から抜けられます。
本人も仕事を抱え込まなくてよくなる。

両方にメリットがあります。

属人化をなくすとは、その人の価値をなくすことではなく、仕事をその人の頭の中から外へ出すことです。

まとめ|「自分しかできない」より「自分がいなくても回る」へ

仕事の属人化は、珍しいことではありません。

  • できる人に仕事が集まる。
  • 本人も、自分でやった方が早い。
  • 忙しいから教える時間がない。

そうしているうちに、「あの人しか分からない。」
という仕事が増えていきます。

でも、その人が休んだだけで仕事が止まるなら、どこかで変える必要があります。

すべてを一気にマニュアル化しなくても構いません。

まずは、止まると困る仕事から。
手順だけではなく、目的や判断基準も残す。
実際に人へ渡して、質問されたところを足していく。

そうやって少しずつ仕組みに変えていけばいいと思います。

「自分しかできない仕事」を増やすことが、自分の価値ではありません。

自分がいなくても仕事は回る。
そのうえで、自分は次の仕事へ進む。新しいことを覚える。

私は、その方が本人にとっても、組織にとっても強い状態だと思っています。

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