「部下とは、どこまで仲良くすればいいんだろう。」
管理職になると、こんな距離感に迷うことがあります。
雑談を増やした方がいいのか。
飲みに誘った方がいいのか。
私生活の悩みまで聞くべきなのか。
逆に、仕事だけの関係では冷たいと思われるのか。
私は、上司と部下は無理に仲良くなる必要はないと思っています。
大切なのは、友達のように近いことではありません。
困ったときに仕事の話ができること。
必要なときに相談できること。
そして、言いにくいこともきちんと伝えられること。
近すぎれば、注意や評価がしづらくなることがあります。
遠すぎれば、小さな問題が上がってこなくなります。
上司と部下の距離感に、全員共通の正解はありません。
ただ、仕事上の関係として機能しているかどうか。
私は、そこを基準に考えた方がいいと思っています。
上司と部下は友達になる必要はない
部下と仲が良いこと自体は、悪いことではありません。
会話が多い。趣味が合う。食事に行くこともある。
そういう関係が自然にできることもあります。
ただ、友達とは違う役割があります。
- 仕事を任せる。
- 進捗を見る。
- 評価する。
- 必要なら注意する。
- 場合によっては、本人が嫌がることでも伝えなければなりません。
ここで、「嫌われたくない。」「今の関係を壊したくない。」という気持ちが強くなると、本来言うべきことが言えなくなることがあります。
私は、職場は仲良しグループではないと思っています。
もちろん、人間関係が悪いより良い方が仕事はしやすいです。
でも、職場で一番大切なのは、仲が良いことではなく、良い仕事ができる関係であることです。
好かれる上司になることより、必要なことを話せる上司でいる。私は、その方が長い目では部下との信頼につながると思っています。
「仲が良い」と「信頼されている」は同じではない
上司と部下の距離感を考えるとき、
「よく話すから関係は良い。」
「飲みに行くから信頼されている。」
と思ってしまうことがあります。
でも、私は、仲の良さと仕事上の信頼は別だと思っています。
例えば、
- 普段はよく雑談する。
- 一緒に食事にも行く。
- でも、部下がミスを隠す。
- 上司も注意しづらい。
- 評価を甘くしてしまう。
これでは、距離は近くても仕事上の信頼関係があるとは言いにくいです。
逆に、普段はそこまで雑談しなくても、
- 困ったら相談できる。
- ミスを早めに報告できる。
- 上司も必要な注意をする。
- 部下も違うと思えば意見を言える。
こういう関係なら、仕事上はかなり健全です。
私は、
言いやすいことだけを言える関係より、言いにくいことも必要なら話せる関係の方が信頼に近い
と思っています。
部下ごとに距離感は違っていい
人によって、心地よい距離は違います。
雑談が好きな人もいます。
仕事の話だけで十分な人もいます。
自分の家族の話をよくする人もいれば、私生活は職場で話したくない人もいます。
だから、すべての部下に同じ距離で接する必要はないと思います。
ある部下とはよく話す。
別の部下とは、必要な仕事の会話が中心になる。
それ自体は問題ありません。
ただし、人間関係の距離が違っても、仕事の基準まで変えてはいけない。ここは大切です。
- 仲の良い部下だから遅刻を見逃す。
- あまり話さない部下には厳しくする。
- 親しい部下には良い仕事を多く回す。
これでは、周囲から見ればえこひいきです。
本人にそのつもりがなくても、
「仲が良い人だけ得をしている。」と見られることがあります。
雑談の量や付き合い方は違ってもいい。
でも、評価、ルール、注意する基準、仕事を任せる考え方。ここは公平にする。
距離は違っても、仕事の基準は変えない。
この線を持っておくと、部下との関係も作りやすくなると思います。
普段から話しやすい関係を作っていても、周囲に人がいる場では話しにくいこともあります。
仕事の悩みや不満、今後どうしたいのかまで聞きたいときは、1on1のように落ち着いて話せる時間を作るのも有効です。
1on1で何を話せばいいのか迷う方は、こちらの記事で具体的にまとめています。
雑談は「話しかける入口」くらいでいい
「部下との関係を良くするには、雑談が大事。」
と言われることがあります。
確かに、少し雑談があるだけで話しやすくなることはあります。
でも、無理に雑談を増やす必要はないと思っています。
特に、
- 「休みの日は何してるの?」
- 「彼氏や彼女はいるの?」
- 「家族は何してるの?」
と、私生活まで積極的に聞こうとすると、相手によっては負担になります。
雑談が得意ではない人もいます。
上司とプライベートな話をしたくない人もいます。
だから私は、雑談そのものを目的にしなくていいと思っています。
例えば、
- 「この前の案件、どうだった?」
- 「最近ちょっと忙しそうだけど、仕事量大丈夫?」
- 「さっきの資料、分かりやすかったよ。」
そんな仕事に近い短い会話でも十分です。
大切なのは、雑談をたくさんすることではなく、
部下が声をかけるハードルを下げること。
普段から少し会話があれば、「ちょっと相談いいですか。」と言いやすくなります。
こうした関係があれば、部下が退職を決め切る前に相談してくれる可能性もあります。実際に相談を受けたときの考え方は、部下から退職相談されたら?引き止める前に上司が考えることにまとめています。
雑談は、信頼関係そのものではありません。
仕事の話を始めやすくする入口くらいに考えておけばいいと思います。
職場の雑談が苦手でも、無理に話し続ける必要はないという話は、こちらの記事でも書いています。
部下の私生活には必要以上に踏み込まない
部下から、「家庭の事情で来週早退したいです。」
と言われたとしましょう。
このとき、「何があったの?」「誰がどうしたの?」
と、全部聞き出す必要はありません。
仕事を調整するために必要なのは、
- 「何時ごろ帰る必要があるのか。」
- 「引き継ぐ仕事はあるのか。」
- 「こちらで対応した方がいいことはあるのか。」
といった部分です。
本人が自分から詳しく話すなら、話を聞けばいいと思います。でも、上司だからといって、部下の私生活を何でも知る必要はありません。
一方で、「それはプライベートだから関係ない。」と完全に突き放すのも違います。
家庭の事情。体調。生活上の問題。
そうしたことが仕事に影響する場合もあります。
だから、聞かないことと、無関心でいることは別です。
必要な配慮があるかは確認する。
でも、本人が話したくないところまで踏み込まない。
友達になる必要はなくても、仕事をする相手として関心を持ち、言動がどう受け取られるかを考える力は必要です。【EQとは】管理職ほど必要?仕事で重要な理由と高め方で、その考え方を詳しく書いています。
上司には評価する立場があります。
そのため、部下にとって上司は、友人と同じように何でも話せる相手ではないこともあります。
その前提を忘れない方がいいと思います。
注意するときに距離感の良し悪しが出る
上司と部下の関係が一番分かりやすく出るのは、注意するときかもしれません。
普段仲が良い部下だから、「まあ今回はいいか。」と流してしまう。
これが続けば、本人のためにもなりません。
一方で、普段はほとんど話しかけないのに、ミスをしたときだけ突然出てきて強く注意する。
これも、部下からすると受け入れにくいと思います。
私は、普段から仕事について話しておくことが大切だと思っています。
- 「ここはこういう理由で大事。」
- 「この部分は必ず確認して。」
- 「困ったら早めに言って。」
そういう会話が普段からある。
そのうえで問題が起きたら、何があったのか。何に影響したのか。次からどうしてほしいのか。を伝える。
人格ではなく、仕事上の事実について話します。
関係が良いから注意しないのではなく、関係があるからこそ必要なことを言える。
私は、それが上司と部下の健全な距離感だと思います。
距離が近いから信頼されるわけではない
管理職になると、
「もっと部下と近づいた方がいいのではないか。」と考えることがあります。
でも、近づけば近づくほど信頼されるとは限りません。
むしろ部下からすると、
- 自分の私生活を詮索されない。
- 必要以上に飲み会へ誘われない。
- 評価を公平にしてくれる。
- 困ったときには話を聞いてくれる。
- ミスしたときには必要な注意をしてくれる。
こうした上司の方が安心できることもあります。
上司と部下の関係では、近さよりも、
安心して仕事ができるかを見る方がいいと思います。
相談したら話を聞いてもらえる。
報告したら頭ごなしに怒られない。
でも、間違ったことは間違っていると言ってもらえる。
仕事上の基準は誰に対しても大きく変わらない。
それなら、雑談が少なくても十分良い関係です。
職場では無理に仲良くなる必要はないという考え方については、同僚との関係の記事でも書いています。
まとめ|目指すのは「仲の良い上司」より「話せる上司」
上司と部下の距離感に、一つの正解はありません。
雑談が多い方が話しやすい人もいます。
仕事の話だけの方が気楽な人もいます。
部下によって距離が違ってもいいと思います。
ただし、
- 仕事上の基準は公平にする。
- 必要な報告や相談ができる。
- 上司からも必要な注意ができる。
- 私生活には踏み込みすぎない。
- でも、困っているときには無関心にならない。
このあたりが保てていれば、仕事上の関係としては十分機能しています。
私は、上司と部下の適切な距離感は、何回雑談するか。一緒に飲みに行くか。どれだけ私生活を知っているか。
では決まらないと思っています。
必要なときに相談できる。
必要なときに注意できる。
そして、仕事の基準を公平に保てる。
その距離なら、無理に友達のような関係を作らなくてもいい。
「仲の良い上司」を目指すより、仕事の話ができる上司を目指す。
私は、そのくらいの距離感がちょうどいいと思っています。




