【KPIの作り方】目標から逆算して「行動が変わる数字」を決めよう

【KPIの作り方】目標から逆算して「行動が変わる数字」を決めよう 実務スキル

「KPIを設定してください」と言われても、何を数字にすればいいのか迷うことがあります。

売上、件数、成約率、作業時間。数字なら何でもKPIになるわけではありません。

KPIは、目標へ向かう途中でズレに気づき、次の行動を変えるための数字です。

この記事では、KGIとの違いから、KPIの作り方、目標値・測定方法の決め方、数字を追わせた結果かえって仕事が悪くなる失敗例まで、実務で使える形に絞って解説します。

この記事で分かること

  • KPIとKGIの違い
  • KPIを目標から逆算して作る方法
  • 先行指標と結果指標の考え方
  • 目標値・測定方法・確認頻度の決め方
  • 使えないKPI、逆効果になるKPIの見分け方

KPIとは「目標まで順調に進んでいるか」を見る数字

KPIは、Key Performance Indicatorの略です。
日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。

言葉は難しく見えますが、考え方はシンプルです。

最終目標へ向かう途中で、仕事が順調に進んでいるか確認するための数字。

中小企業庁も、KPIを最終目的の達成に向けて企業活動が順調に進んでいるかを見る指標として整理しています。

たとえば営業部門で、年間売上1億円を目標にしているとします。12月になって「1億円に届きませんでした」と分かっても、その年はほぼ終わっています。

そこで途中で、

  • 商談件数
  • 見積提出件数
  • 成約率
  • 平均受注単価

などを確認します。

商談が少ないなら商談を増やす。商談は多いのに決まらないなら提案内容を見直す。受注しているのに売上が足りないなら単価を見る。

KPIは、結果が出る前に問題の場所を見つけるための数字です。

KGIとKPIの違い

KPIを考えるとき、一緒に出てくるのがKGIです。

種類役割例
KGI最終的に達成したい結果年間売上1億円
KPIKGIへ進んでいるか途中で確認する数字商談件数・成約率・平均単価

ただし、「売上は必ずKGI」「商談件数は必ずKPI」と固定されるわけではありません。

会社全体では利益がKGIで、売上がKPIになることもあります。営業部門だけを見れば、その売上がKGIになることもあります。

言葉の分類より大切なのは、何を最終的に達成したいのか。そこへ行く途中で何を見るのかを分けることです。

KPIは目標から逆算して作る

KPIを作るとき、最初に「測れそうな数字」を探すとズレやすくなります。

先に決めるのは、何を達成したいのかです。

例|月間売上1000万円を目指す

たとえばKGIを、月間売上1000万円とします。

売上を単純化すると、売上 = 顧客数 × 平均単価と考えられます。

さらに顧客数は、商談件数 × 成約率と分解できるかもしれません。

段階見る数字
最終目標月間売上1000万円
売上を構成する要素顧客数 × 平均単価
顧客数を構成する要素商談件数 × 成約率

ここから、今どこが弱いのかを見ます。

  • 商談そのものが少ない → 商談件数を見る
  • 商談は多いのに決まらない → 成約率を見る
  • 受注しているのに売上が伸びない → 平均単価を見る

ゴールを分解して、改善したい場所にKPIを置く。

これが基本です。

KGIからKPIへ分解する

KPIは「自分たちで動かせる数字」にする

KPI候補を考えたら、次に確認したいのが、

「この数字は、自分たちの行動で変えられるか?」

景気や為替のように、自社で直接動かせない数字を日々のKPIにしても、現場は困ります。

中小企業庁のPMI支援資料でも、KPIは自社でコントロール可能で、成果につながりやすいものに絞る考え方が示されています。

曖昧な目標行動につながる指標へ落とす例
新規顧客を増やす新規商談件数、見積提出件数
対応を早くする問い合わせ当日回答率、平均回答時間
ミスを減らす手戻り件数、再確認が必要だった件数

ここまで落とすと、今日何を変えれば数字が動くのか見えてきます。

結果だけでなく「先に動く数字」を見る

KPIでは、結果が出たあとに分かる数字だけでなく、結果より先に動く数字を見るのが重要です。

種類例特徴
結果を見る数字売上、利益、不良率、離職率結果は分かるが、分かった時点では手遅れになりやすい
先に動く数字商談件数、提案件数、点検実施率結果が出る前に修正しやすい

月末に売上不足が分かるより、月半ばで「商談件数が予定の半分しかない」と分かる方が動けます。

結果を見る数字と、途中で修正できる数字を分けて考える。

良いKPIは「数字を見れば次の行動が分かる」

KPI候補が出たら、私はこの質問が分かりやすいと思います。

「この数字が悪かったら、何を変える?」

KPI悪かったときに確認・変更すること
商談件数新規接触数、訪問・問い合わせ対応を見直す
成約率提案内容、価格、対象顧客を見直す
手戻り件数発生工程、原因、確認方法を調べる
作業時間待ち時間、ボトルネック、手順を調べる

答えが出るなら、実務で使えるKPIである可能性が高いです。

逆に、数字は取れるけれど、悪かったとき何を変えればいいか全く分からないなら、KPIとしての価値は低いかもしれません。

KPIの作り方は6ステップ

1.最終目標を決める

最初にKGIを決めます。

「利益を増やす」ではなく、「半年後までに月間粗利益500万円」のように、できるだけ具体的にします。

2.目標を構成する要素へ分解する

売上、案件数、平均単価、粗利率など、目標を決めている要素を考えます。

3.どこを改善するか決める

全部をKPIにしません。

案件数が足りないのか、単価なのか、粗利率なのか。今の課題を絞ります。

4.自分たちで動かせる数字へ落とす

商談数、見積数、値引率、手戻り件数など、現場の行動で変えられる数字まで落とします。

5.目標値・測定方法・頻度・担当を決める

「商談件数」だけでは足りません。

たとえば、

  • KPI:商談件数
  • 目標:月40件
  • 取得元:営業管理表
  • 担当:営業責任者
  • 確認:毎週月曜日

まで決めます。

誰が数えても同じ数字になるよう、「何を1件と数えるか」まで決めておくとズレにくくなります。

6.数字を見て行動を変える

最後が一番重要です。

商談数が足りないなら何を増やすのか。商談は足りているのに成約率が低いなら何を調べるのか。

KPIは記録して終わりではなく、数字を見て仕事を修正するところまでがセットです。

KPIを作る6ステップ

KPIの目標値には理由を持たせる

KPIを作ると、「商談50件」など適当に切りのいい数字を置きたくなります。
でも、目標値には理由があった方がいいです。

たとえば、月10件受注したい。現在の成約率が25%なら、必要な商談数は、

10件 ÷ 25% = 40件

この場合、「商談40件」にはKGIから逆算した理由があります。

ほかにも、過去実績、人員、稼働時間、改善施策の効果などを材料にします。

SMARTで確認する

KPIを確認するときは、SMARTの考え方も使えます。

項目確認すること
Specific何を見る数字なのか具体的か
Measurable測定できるか
Achievable現実的に達成可能か
RelevantKGIにつながっているか
Time-bound期限や確認期間が決まっているか

英語を覚える必要はありません。

具体的・測れる・現実的・目的につながる・期限がある。

この5点を見るだけです。

KPIは増やしすぎない

KPIを作り始めると、「これも必要」「あれも見たい」と増えがちです。

20個、30個と並べて、会議では数字を読み上げるだけ。これでは、何が重要なのか分からなくなります。
KPIのKはKeyです。

重要な指標に絞る。

「今、一番変えたい場所はどこか」から考える方が実務では使いやすいです。

数字を追わせると、仕事が悪くなることもある

KPIは人の行動を変えます。
だからこそ、設計を間違えると逆効果になることがあります。

たとえば営業担当に、「訪問件数を月50件にする」というKPIだけを与えたとします。

すると、受注につながりそうかどうかより、件数を達成するために意味の薄い訪問を増やすかもしれません。

処理件数だけを追えば、確認を飛ばして品質が落ちるかもしれません。

問い合わせ対応時間だけを追えば、早く閉じることが目的になり、顧客満足が落ちるかもしれません。

追わせる数字起こりうる逆効果一緒に見る数字の例
訪問件数質の低い訪問が増える商談化率・成約率
処理件数確認不足やミスが増える不良率・手戻り率
回答時間内容の質が落ちる再問い合わせ率・満足度

KPIを決めるときは「この数字を追わせたら、人はどんな行動をするか」まで考える。

数字を達成すること自体が目的にならないよう、品質や成果側の数字も一緒に確認します。

悪いKPIと良いKPIの違い

KPIを達成してもKGIが動かないなら見直す

商談40件というKPIを毎月達成している。
それでも売上が伸びない。

この場合、「KPIを達成しているから問題なし」ではありません。KPIを達成することが最終目的ではないからです。

商談の質が低いのかもしれない。成約率が落ちているのかもしれない。単価が下がっているのかもしれない。

KPIを改善してもKGIに近づかないなら、最初に考えた「この数字を動かせば成果につながる」という仮説を見直します。

KPIは人を評価するためだけではなく、仕事のやり方や仮説が正しかったかを検証する数字でもあります。

KPIを見る前に、数字の読み方も押さえる

KPIは数字なので、読み方を間違えると判断も間違います。

平均だけを見る。割合だけ見て母数を見ない。都合のいい期間だけ比較する。

こうした見方をすると、KPIそのものが正しくても判断を誤ります。

ExcelやスプレッドシートでKPIを管理する

KPIが決まれば、管理表は複雑でなくても構いません。

KPI現状目標差担当確認頻度
商談件数24件40件-16件営業担当毎週
成約率20%25%-5pt営業責任者毎月
平均単価80万円90万円-10万円営業責任者毎月

立派なダッシュボードを作ることが目的ではありません。

数字を見て、仕事が変わればいい。

KPIは部下を監視するための数字ではない

KPIを「数字で社員を追い込むためのもの」にすると、現場は数字を達成すること自体を仕事にし始めます。

私はそれより、「今どこで詰まっているか」をチームで共通認識にする道具として使う方がいいと思っています。

商談が足りない。成約率が落ちている。手戻りが増えている。

数字で問題の場所が共有できれば、「誰が悪い」ではなく「どこを直す」に話を進めやすくなります。

まとめ|KPIは「見たら行動が変わる数字」にする

KPIを作るときは、最初に最終目標を決めます。

そこから目標を構成する要素へ分解し、今改善する必要があり、自分たちの行動で動かせる数字を選びます。

そして、

  • 目標値に理由がある
  • 測定方法が決まっている
  • 誰が見るか決まっている
  • 確認頻度が決まっている
  • 数字が悪ければ次の行動が分かる

状態にします。

KPIは管理表を埋めるための数字ではありません。

目標に届かなくなる前に、仕事のズレへ気づくための数字です。

迷ったら、最後に一つだけ確認してみてください。

「この数字を見て、私たちは何を変える?」

答えられる数字なら、実務で使えるKPIにかなり近づいています。

参考にした公的情報