「自信がついたら、やってみよう」
そう思っているのに、なかなか動けない。
転職でうまくいかなかった。
仕事で何度か失敗した。
新しい仕事を任されたけれど、自分にできる気がしない。
逆に、周囲からは評価されているのに、「自分はそこまでできる人間じゃない」と感じる人もいると思います。
こういうとき、必要なのは無理に「私はできる!」と思い込むことではありません。
心理学には、自己効力感(self-efficacy)という考え方があります。
簡単にいえば、「自分にもできそうだ」と思える感覚です。
自己効力感は、何もしていない状態で気合を入れて作るものではありません。
まず小さく動く。
できた事実を残す。
その事実を使って、次の行動へ進む。
私は、この順番の方が現実的だと思っています。
この記事で分かること
- 自己効力感とは何か
- 自信・自己肯定感との違い
- なぜ失敗が続くと「自分には無理」と思いやすくなるのか
- 自己効力感を作る4つの情報源
- 自己効力感を高める5つの行動習慣
- 仕事で自信を失ったときの立て直し方
- 自己効力感とは「この行動なら自分にもできそう」という感覚
- 自己効力感と「自信」「自己肯定感」は少し違う
- 自己効力感が下がると「行動しない→さらに自信がなくなる」が起きやすい
- 自己効力感は「4つの情報源」から作られる
- 自己効力感を高める行動① 小さすぎるくらいの成功を作る
- 自己効力感を高める行動② 「できた事実」を記録する
- 自己効力感を高める行動③ 自分と近い人を見る
- 自己効力感を高める行動④ 周囲の評価も「できた証拠」にする
- 「褒められる」より、何が良かったか分かる方が強い
- 自己効力感を高める行動⑤ 調子が悪い日は「能力がなくなった」と判断しない
- 失敗したときは「自分には無理」ではなく原因を小さくする
- 40代でも、役職があっても、自信がなくなることはある
- 自信がついてから挑戦するのではなく、挑戦した事実から自信を作る
- 自己効力感を高めたいときの5つの行動
- まとめ|自己効力感は「できた」の積み重ねから作れる
自己効力感とは「この行動なら自分にもできそう」という感覚
自己効力感は、心理学者アルバート・バンデューラが提唱した概念です。
ざっくりいえば、
ある結果を得るために必要な行動を、自分は実行できると思えるか
という感覚です。
重要なのは、「自分はすごい人間だと思えるか」ではないことです。
自己効力感は、課題や状況によって変わります。
たとえば同じ人でも、
- 人前で説明するのはできる
- Excelは苦手
- 新人教育ならできる
- 営業電話は自信がない
- 資格試験は頑張れそう
- 転職活動は怖い
ということがあります。
つまり、「私は自信がある人か、ない人か」の二択で考えなくていい。
「何について、できないと思っているのか」まで細かくすると、対策が見えてきます。
自己効力感と「自信」「自己肯定感」は少し違う
似た言葉が多いので、簡単に整理します。
| 言葉 | ざっくりした意味 | 例 |
|---|---|---|
| 自己効力感 | 特定の行動を「自分ならできそう」と思える | 「この仕事なら自分でも対応できそう」 |
| 自信 | もっと広い意味で使われる日常語 | 「仕事には自信がある」 |
| 自己肯定感 | 自分自身をどう受け止めるかに関わる言葉 | 「失敗しても自分の価値全部がなくなるわけではない」 |
特に自己効力感は、具体的な課題や行動に結びついているのが特徴です。
だから、「自信のある人になろう」では少し大きすぎます。
それより、「次の会議では一度発言できそう」「この作業なら一人でできそう」くらいまで具体化した方が、自己効力感は扱いやすくなります。
自己効力感が下がると「行動しない→さらに自信がなくなる」が起きやすい
失敗が続くと、「また失敗するかもしれない」と思います。すると、新しいことを避ける。避ければ、成功する経験も増えません。
そして、「やっぱり自分にはできることがない」と感じる。
こうして、
失敗する
↓
自信をなくす
↓
行動を避ける
↓
できた経験が増えない
↓
さらに自信をなくす
という循環が起こることがあります。
自己効力感は、行動を選ぶかどうか、どれだけ努力するか、困難があってもどれだけ続けるかとも関係すると考えられています。
逆にいえば、この循環は途中で切れます。
最初から大成功する必要はありません。
「できることを一つ増やす」
ところから始めればいい。
自己効力感は「4つの情報源」から作られる
バンデューラは、自己効力感に影響する主な情報源として4つを挙げています。
| 情報源 | 意味 | 仕事での例 |
|---|---|---|
| 遂行経験 | 自分でやって、できた経験 | 初めて一人で資料を完成させた |
| 代理経験 | 他人ができる様子を見る | 同じ立場の人が資格に合格した |
| 言語的説得 | 他人から認められる・励まされる | 「前より説明が分かりやすくなった」 |
| 生理的・情動的状態 | 緊張・疲労など身体や感情の状態 | 落ち着いていると「できそう」と感じる |
中でも、自分自身で実際にやり遂げた経験は、特に強い情報源とされています。
人から何度、「あなたならできますよ」と言われても、自分の中に「でも、やったことないしな」が残ることがあります。
反対に、「実際に一回できた」という事実があると、「じゃあ、次もできるかもしれない」に変わります。
だから私は、自信がないときほど、
自信を作ってから行動するのではなく、行動して自信の材料を作る方がいいと思っています。
自己効力感を高める行動① 小さすぎるくらいの成功を作る
最初から難しいことに挑戦する必要はありません。
むしろ、自信を失っているときに大きな挑戦をすると、また失敗して、「やっぱりダメだった」という材料を増やしてしまうことがあります。
なら、難易度を下げます。
たとえば資格勉強なら、「毎日2時間勉強する」ではなく、「今日は問題を5問解く」からでもいい。
仕事なら、「プレゼンが得意になる」ではなく、「次の会議で一度だけ発言する」でもいい。
大事なのは、
「できた」と自分で認識できる大きさにすること。
できたら、次は少しだけ難しいことをやる。
そうやって、「できた」の回数を増やしていく。
最初から自信満々である必要はありません。
自己効力感を高める行動② 「できた事実」を記録する
成功しているのに、自分では成功だと思っていない人もいます。
- 仕事を終わらせても、「これくらい普通」
- 褒められても、「たまたまです」
- 資格に受かっても、「簡単な資格だから」
そうやって全部消してしまえば、何年働いても、「自分には何もない」と感じることがあります。
だから、できたことを記録します。
立派な日記でなくていい。
今日できたこと
・苦手だった作業を一人で終わらせた
・分からないことを質問できた
・昨日より10分早く終わった
目的は、自分を無理に褒めることではありません。
「実際に何ができたか」という証拠を残すことです。
自信が揺らいだとき、「自分は何もできない」という気分ではなく、これまで実際にできたことに戻れます。
自己効力感を高める行動③ 自分と近い人を見る
次は、代理経験です。
人は、自分と似た人が何かをできるようになる姿を見ると、「あの人にできたなら、自分にもできるかもしれない」と思いやすくなります。
特に、自分と近いと感じる人の成功は、自己効力感の材料になりやすいとされています。
ここでポイントなのは、いきなり世界一を見る必要はないことです。
- 入社1年目なら、入社3年目くらいの先輩。
- 資格なら、仕事をしながら合格した人。
- 40代なら、同じ年代から始めた人。
自分から遠すぎる人を見ると、「この人だからできたんだ」で終わってしまうこともあります。
少し先を歩いている人くらいが、ちょうどいい。
自己効力感を高める行動④ 周囲の評価も「できた証拠」にする
他人からの言葉も、自己効力感の情報源になります。
私自身、これをかなり実感しています。
私はもともと現場の人間でした。
営業については、「自分にはできない」「そもそも、やりたくない」と思っていました。
でも、立場が変わって、自分が営業しなければ仕事が進まない場面が増えました。
やりたいかどうかではなく、やるしかない。
そんな感じで始めました。
最初から営業に自信があったわけではありません。
それでも実際に客先へ行く。商品を説明する。相手の質問に答える。提案する。
そうやって繰り返しているうちに、「あれ。思っていたよりできるかもしれない」と思うようになりました。
さらに、
「説明が分かりやすい」
と言われたり、
「今度、同行営業してほしい」
と言われたりしたことがあります。
その日は、正直に言えば、にやつきました。
嬉しかったです。
でも、ただ褒められて嬉しかっただけではありません。
自分ではずっと、「営業は自分の仕事じゃない」「自分にはできない」と思っていた。
それを実際にやってみた。
ある程度できた。
さらに、その結果を周囲にも認めてもらった。
そこで初めて、「自分、営業もできるんだな」と思えました。
これは、自己効力感でいう
自分でできた経験と、周囲からの具体的な評価の両方が重なった状態だと思います。
自信があったから営業できたわけではありません。営業をやったから、あとから自信がついた。
私は、この順番がすごく大事だと思っています。
「褒められる」より、何が良かったか分かる方が強い
周囲からの言葉なら何でもいい、というわけでもありません。
「すごいですね」「さすがですね」と言われるのも嬉しい。
でも、
「説明が分かりやすかった」
「あの判断が早かった」
「この資料なら、そのまま顧客へ出せる」
のように、何が良かったのかが具体的に分かる言葉の方が、次に使える自信になります。
「説明が分かりやすい」と言われれば、自分には説明する力があるのかもしれないと分かる。
「同行してほしい」と言われれば、自分の説明や営業に、人から必要とされる部分があると分かる。
他人からの評価を全部、「お世辞だ」「たまたまだ」と捨てる必要はありません。
それも一つの事実として受け取ればいいと思います。
自己効力感を高める行動⑤ 調子が悪い日は「能力がなくなった」と判断しない
自己効力感には、身体や感情の状態も影響します。
強い緊張や不安、疲労などを、「自分にはできない証拠だ」と受け取ってしまうと、自己効力感が下がることがあります。
仕事でもあります。
- 寝不足。
- 疲れている。
- 大きな失敗の直後。
- 忙しさが続いている。
そんな日に仕事がうまくいかなかった。
そこで、「自分は仕事ができない」まで話を広げない。
- 今日は調子が悪かった。
- 準備不足だった。
- 初めての仕事だった。
- 情報が足りなかった。
原因を分けて考えます。
今日できなかったことと、自分にはできないことは別です。
仕事のやる気が出ない日については、こちらでも書いています。
失敗したときは「自分には無理」ではなく原因を小さくする
仕事で失敗すると、「私は仕事ができない」と大きくまとめてしまうことがあります。
でも、「仕事ができない」では改善できません。
たとえば、「会議でうまく説明できなかった」なら、
- 準備不足だった
- 要点を絞れなかった
- 数字を確認していなかった
- 緊張して早口になった
まで分けます。
すると、次に何を変えればいいかが見えます。
自己効力感は、根拠なく「できる、できる」と言い続けることではありません。
できなかった原因を細かくして、次にできる可能性を上げる。
これも自信を作る方法だと思います。
40代でも、役職があっても、自信がなくなることはある
「自信がない」というと、若手や経験不足の人を想像するかもしれません。
でも、年齢や役職だけで決まるものではありません。
- 長年働いていても、転職して仕事のやり方が変わった。
- 管理職になって求められる能力が変わった。
- 得意だった仕事がなくなった。
- 何度か失敗が続いた。
こういうことがあれば、「自分は本当にできるのか」と思うことはあります。
逆に、昇進して周囲から評価されても、「実際の自分より高く評価されている気がする」と感じる人もいるでしょう。
だから、「40代なのに自信がない」「管理職なのに不安になる」と、そこまで自分を責めなくていいと思います。
役割が変われば、その役割についての「できそう感」は、また作り直せばいい。
私自身も、現場の仕事についての自信と、営業についての自信は別でした。現場経験が長いからといって、営業まで最初から自信があったわけではありません。
でも、新しい役割を実際に経験することで、
「これもできる」が一つ増えました。
自信がついてから挑戦するのではなく、挑戦した事実から自信を作る
私は、ここが一番重要だと思っています。
自信がない→だから挑戦しない→経験が増えない→もっと自信がなくなる。
この順番を逆にします。
小さくやってみる
↓
できた部分を確認する
↓
事実として残す
↓
次は少しだけ難しいことをする
自信が先ではありません。
行動が先です。
私も、「営業ができるようになってから営業を始めた」わけではありません。営業を始めたから、少しずつ営業ができるようになりました。
昔できなかったことでも、今の自分ならできる場合があります。
環境も違う。知識も違う。経験も違う。
だから、過去の失敗だけを材料に、「自分にはできない人間だ」と決める必要はありません。
新しいことを始めるのに年齢が気になる人は、こちらも参考にしてください。
自己効力感を高めたいときの5つの行動
最後に整理します。
| 行動 | 何をするか | ねらい |
|---|---|---|
| ① 小さく成功する | 難易度を下げて実際にやる | 遂行経験を作る |
| ② できたことを記録する | 成果や成長を事実として残す | 成功を見落とさない |
| ③ 少し先の人を見る | 自分に近い成功例を見る | 代理経験を得る |
| ④ 周囲の評価を受け取る | 何が良かったかを具体的に知る | 言語的説得を材料にする |
| ⑤ 状態と能力を分ける | 疲労・緊張・準備不足を切り分ける | 一度の不調で全否定しない |
なお、バンデューラが示した基本的な情報源は4つです。
ここで紹介した「できたことを記録する」は、5つ目の理論という意味ではありません。
自分の遂行経験を見失わず、次の行動に使うための実践習慣として加えています。
まとめ|自己効力感は「できた」の積み重ねから作れる
自己効力感は、「私は何でもできる」と思うことではありません。
- 「これはできそう」
- 「前にも一度できた」
- 「まだ完璧じゃないけど、前よりできる」
そんな具体的な感覚です。
だから、自信がないときに無理やり自分を信じなくてもいい。
まずは、できることを一つ増やす。
そして、できた事実を消さない。
誰かから、「ここが良かった」と言われたなら、それも受け取る。自分では気づいていなかった能力を、他人が教えてくれることもあります。
自信を作ってから動くのではありません。
動いた結果が、次に動くための自信になる。
私は、その積み重ねが一番強い自信になると思っています。
何か始めたいけれど、何から手をつければいいか分からないなら、
勉強を始めたいけれど時間がないなら、
これらも参考にしてください。
今日できることを、一つだけ増やす。
そこから始めてみてください。





