後輩に仕事を教えるのは、簡単なことではありません。
自分では当たり前にできていることでも、いざ説明しようとすると、何をどう伝えればいいのか悩むものです。
だから、「教えるのが苦手」という人がいるのは不思議ではありません。
でも、本当にそれだけでしょうか。
職場には、仕事を教えない人、知識を共有しない人がいます。
その理由は「教えるのが苦手」だけでは説明できないこともあります。
私は、その背景には人の心理が大きく関係していると思っています。
人を育てられない理由は一つではない

人を育てられない人を見ると、「教えるのが苦手なんだろう」と考えがちです。
もちろん、それも一つの理由です。
しかし、人を育てられない理由は一つではありません。
私が見てきた中では、大きく3つあると思っています。
教え方が分からない
仕事はできても、自分の感覚を言葉で説明するのが苦手な人はいます。
例えば、
- 自分の感覚を言葉にできない
- 相手がどこでつまずいているか分からない
- 手順を整理して伝えられない
これは性格ではなく、指導スキルの問題です。
本人に教える意思があるなら、経験を積むことで改善できます。
教える意思があっても、「何でも聞いて」と伝えるだけでは、後輩が何を質問すればいいのか分からないことがあります。質問しやすい状態の作り方は、こちらの記事で詳しく書いています。
→【部下が質問してこない】「何でも聞いて」で終わらせない教え方
嫌われるのが怖い
後輩を注意すれば反発されるかもしれません。
厳しく言えば、「嫌な上司」と思われるかもしれません。
そのため、間違いに気づいても何も言わず、そのままにしてしまう人もいます。
嫌われたくないから注意を避けていると、後輩はミスを早く相談する基準も学べません。問題を隠さず、早く頼ってもらうための教え方は、こちらの記事で詳しく書いています。
一見すると優しさのようですが、実際には後輩ではなく、自分の印象を守っているだけの場合もあります。
後輩に追い抜かれるのが怖い
これが、一番本人の口から出にくい理由です。
例えば、
- ノウハウを全部教えたくない
- 自分しかできない仕事を残したい
- 後輩が評価されると困る
- 自分の存在価値が薄れるのが怖い
本人はそう認めないかもしれません。
表向きは、
- 「まだ早い」
- 「自分で考えさせている」
- 「簡単に教えると本人のためにならない」
と説明することもあるでしょう。
もちろん、本当にそう考えている人もいます。
しかし中には、自分の立場を守りたいという気持ちが隠れている場合もあります。
知識を抱え込むことは、会社のリスクになる

仕事を教えなければ、自分の立場は一時的に守れるかもしれません。
「この仕事は自分しかできない。」
そんな状態になれば、会社から必要とされているように感じるでしょう。
しかし、それは本当に会社にとって良いことでしょうか。
教えない状態が続くと、会社では次のような問題が起こります。
- 同じ人しか仕事ができない
- ノウハウが共有されない
- 担当者が休むと仕事が止まる
- 退職すると知識まで失われる
会社にとって必要なのは、「一人しかできない仕事」を増やすことではありません。
誰が担当しても仕事が回る仕組みを作ることです。
知識を抱え込めば、一時的には「自分しかできない人」になれるでしょう。
しかし、それは会社に貢献しているのではなく、
会社を自分に依存させている状態です。
本当に会社に必要なのは、「その人がいないと困る人」ではありません。
人を育て、仕組みを作り、自分がいなくても仕事が回る状態を作れる人です。
自分だけができる状態を守ることではなく、仕事が回るところまで考えて動く。それも、会社に対して責任を持つということだと思います。
「自分しかできない人」と「会社に必要な人」は違う

「この仕事は○○さんしか分からない。」
職場でこんな話を聞くと、「すごい人なんだな」と思うかもしれません。
確かに、その人には高い知識や技術があるのでしょう。
しかし、会社という視点で見ると、それは大きなリスクでもあります。
例えば、
- その人が休むと仕事が止まる
- 業務改善が進まない
- 組織が大きくならない
つまり、会社が一人の人に依存している状態です。
もちろん、専門性を持つことは大切です。
しかし、本当に会社に必要な人とは、「自分しかできない仕事」を増やす人ではありません。
人に教え、仕組みにし、自分は次の役割へ進める人です。
最初は自分が担い、次に後輩を育てて仕事を渡す。その姿勢については、【人間力を磨く】嫌な役割でも自分が担うべきなら逃げない人で実体験を交えて書いています。
こうした「特定の人がいないと仕事が回らない状態」は、仕事の属人化とも呼ばれます。
属人化が起きる原因や、「あの人しかできない」をどうなくしていくかについては、こちらの記事で詳しく書いています。
仕事を渡せる人ほど、新しい仕事を任されます。
人を育てられる人ほど、自分自身も成長していくのです。
特に中堅社員になると、自分の仕事をこなすだけでなく、後輩に仕事を渡し、チーム全体を回していく役割も求められるようになります。
中堅社員に何が求められるのかは、こちらの記事で詳しく書いています。
人を育てられる人は、後輩に追い抜かれることを恐れない

後輩に追いつかれたり、追い抜かれたりすることを恐れる人は、自分の価値を「今できること」に置いています。
だから、自分の知識や技術を手放せません。
しかし、人を育てられる人の考え方は少し違います。
「今の仕事を教え終えたら、自分は次の仕事を覚えよう。」
そう考えているのです。
後輩が成長すれば、自分はさらに難しい仕事へ進めます。
また新しいことを学び、その経験を次の後輩へ伝える。
この繰り返しによって、人も会社も成長していきます。
人を育てても、部下が別の道を選び、退職を相談してくることはあります。そのときに上司がまず考えたいことは、部下から退職相談されたら?引き止める前に上司が考えることにまとめています。
だから、人を育てられる人は、後輩に追い抜かれることを恐れません。
むしろ、後輩の成長を喜び、自分も負けないように成長を続けます。
自分の価値は、「今できること」ではなく、「これからも成長し続けられること」にあると考えているからです。
知識は、人に教えたからといってなくなるものではありません。
むしろ、人に教えた人ほど、新しい知識を学ぶ機会が増えていきます。
だから、人を育てることは、自分の仕事を奪われることではありません。
自分が次のステージへ進むための第一歩なのです。
まとめ
人を育てることは、自分の知識や仕事を失うことではありません。
知識は、人に渡した瞬間に価値がなくなるものではないからです。
もし教えたことで、自分の価値がなくなると感じるなら、それは「今できること」が自分の価値になっているのかもしれません。
でも、本当に成長し続ける人は違います。
後輩に仕事を教えたら、自分は次の仕事を覚える。
後輩が育ったら、自分はさらに上を目指す。
その繰り返しが、自分の成長にも、会社の成長にもつながっていきます。
人に教えることは、
自分の価値を失うことではありません。
自分の成長を止めないための、一番の近道なのかもしれません。





